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掲示板の使い方と注意点
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| Weekly Objection(更新日:2007/03/26) | |
| --- 平成20年度次期診療報酬改定に望む --- | |
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いつも当ホームページをご覧いただき有難うございます。 1年ぶりのオブジェクションになりました。多忙という日課に振り回され、いささか自分を失いそうです。今、日歯は20年診療報酬改定への基本的な論点整理を行い鋭意対応しています。その結果を現実に反映させるために絶対必要なものが「政治力」です。7月の戦いが行方を左右しますが、現況は甚だ低調と言わざるを得ません。決して石井みどりさん個人の選挙ではありません。日歯会員及び国民の健康保持のための選挙と位置づけ積極的に支援活動に参加いたしましょう。 1. 平成18年度歯科診療改定を振り返って2. より広い視点から国民に働きかける必要 3. 『市場原理主義』は幸せな社会をもたらすのか 4. オンライン請求をどう捉えるか 5. 歯科医療の最大のステークホルダーは市民 周知のように平成18年度医療費改定は財界・首相官邸・財務省主導での医療費抑制圧力のなかで、−3.16%という過去最大幅の改定率で引き下げが行われました。内訳は医科-1.50%,歯科-1.50%,調剤-0.60%)これに薬価改定等の-1.8%薬価改定-1.6%,材料価格改定-0.2%が加わり、約2370億円の医療費国庫負担削減を図るものとして強行されました。平成16年度改定は±0、平成14年度改定は-1.30%であり、医療費を含む社会保障費への長期的な削減政策が続いています。医療の技術進歩が続き高齢化が進行する中で、国民が必要とする医療ケア需要の質と総量は自然増加しているにもかかわらず、長期的な削減を強いる財界と政府の姿勢は弱肉強食の市場原理主義への過度な信奉から来るもので、国民全体の幸福を願っての政策ではありません。フリードリッヒ・ハイエクやミルトン・フリードマンに連なるいわゆるリバタリアン(自由至上主義)の主張をなぞる竹中平蔵氏や小泉元首相は『格差の何が悪い』、『成功者を妬む風潮を慎まないと社会は発展しない』として、財界の意向に従い、累積した莫大な財政赤字をもともと先進国中で最低水準にある社会保障給付費のさらなる大幅削減により繕おうとしました。その後継者である安部晋三首相は「経済成長なくして財政再建なし(上げ潮政策)」を標榜していますが、経済財政諮問会議の新しい委員にインフレターゲット論者として知られる伊藤隆敏東京大学大学院教授が選ばれたことなどから考えると、これは言い換えれば、インフレやバブルを再現することにより財政再建を行おうとすることかと勘ぐりたくなります。 平成16年度6月に実施された第15回医療経済実態調査の歯科診療所調査によれば、個人歯科診療所の収支は1ヶ月135.1万円であり2年前の123.3万円に比べ、9.6%増加しているとされていますが、この統計が本当に実態を表しているものかどうか、現場の診療所の実感とは甚だしく懸け離れたものであると言わざるを得ません。所謂『統計のウソ』という本まで出ている昨今のこと、過去に行政府が何度も繰り返してきた情報操作の一環かもしれないと疑えばきりがありません。そのくらい現場の診療実感とは異なる数字であるということを強調するとともに、日本歯科医師会独自の定期的な実態調査の必要性を感じるところです。長期間にわたり、診療所は経営の合理化と効率化のためにあらゆる努力を積み重ねており、経営体力の限界に達しています。良質な歯科医療を行おうとすればするほど赤字が嵩む現行の歯科医療体系のもとでは、「悪貨が良貨を駆逐する」事態が出現しています。 一方的な削減である18年度改定の他の主な特徴として、
ただ他の改定内容については、医療に対する国民負担の増大と給付の削減により、企業の国際間競争力を向上させようという思惑のもと、臨床の必要性からではなく、最初に財務省の決めた削減枠に給付内容を押さえ込んだわけですから、診療体系全体にはかなりの無理と歪が生じています。 従来不十分ながら存在した治療から予防への医療政策の潮流は断ち切られ、月末に来院した患者さんに対しては事実上メンテナンスへの移行が困難になってしまいました。つまり歯周病、カリエス、咬合病、原因不明の難組織疾患や口腔乾燥症まで、本来、その診断と治療方針決定には熟達した歯科医師でも慎重かつ万全な鑑別診断と治療方針の取捨選択が必用な複雑な病態に対しても、たった一回で必要な検査と総合的な診断を行い、患者さんにinformed consentに適う十分な説明を行い、治療方針に対する同意を得た上で、歯科疾患総合診断書を複写つきで文書提供しなければメンテナンスには移行できません。慢性疾患であり、生活習慣病である歯周病やカリエス、顎機能障害を治療し、その再発防止をするためには、患者さんのおかれている社会的環境や生活習慣、習癖を充分に理解し、ブラキシズム、クレンチング、咬頭干渉・早期接触、食習慣、基礎疾患、常用薬、睡眠障害や唾液分泌量、末梢血液循環量、歯肉のターンオーバーの速さ、患者さんの持っている健康観まで精査した上で診断、治療計画作製を行わなければ本当の意味で患者さんに歯科的な健康を提供することはできません。メンテナンスが必用な歯科疾患の場合では、このような膨大で複雑、困難な作業を月末に来院した場合、一日で行うことを強制されています。いつの日か、本当の意味での診断をルーティンに行った経験があり、真の診断の意味を理解している方々に点数の割り振りを行なっていただきたいと願っています。 また継続指導料算定期間中の外傷を除くあらゆる再発歯科疾患の算定禁止制限に関しても、現在の大学の教育プログラムのどこに歯根破折の正確な予知や、患者の基礎疾患の急変による再発予防の方法が含まれているのかご教示を仰ぎたいものと思います。歯科疾患はけっして口腔内の事象だけが原因で罹患するわけでなく、患者さんの置かれている社会的、全身的環境が変化することにより発症しているわけで、歯科診療室で一度診断、治療したからと言って、すべての歯科疾患に対し一定期間の無限責任を強いることができる合理的な理由は存在しないと考えます。 派遣社員が突然のリストラで多大なストレスを受け、睡眠中のブラキズムの亢進により歯根破折した責任や、糖尿病の病状の進行や口腔乾燥症のためにむし歯や歯周病が悪化した責任、例え継続管理中であっても、そこまで歯科診療所が責めを負わなければならない現行制度は法理的にも誤っています。 歯周外科手術は1歯600点から1ブロック1000点に削減されましたが、1ブロックが平均4〜6本の歯牙を含むとすれば一気に1/4〜1/6に手術点数が削減されたわけで、消毒、麻酔、一次〜三次切開、剥離、不良肉芽除去、ルートプレーニング、歯槽骨整形、根面形態修正、縫合、歯周パック、カルテ記入、患者さんへの説明を行えばどんなにすばやく手を動かしても、平均40分程度かかる手術が僅か1000点では物理的に行えば行うほど赤字になってしまいます。 今回改定に於いて最も憤懣やるかたないことは、真面目に誠実に診療を行っている診療所ほど、改悪の影響をまともに蒙っていることです。どんな職業でも必ずモラル意識の欠如した者はある一定の割合で存在します。私たち医療者を管掌する厚労省や社会保険庁の官僚にさえもイリーガルな不祥事はめずらしいことではありません。しかし一部の不心得者の存在がネガティブキャンペーンの素材に使われるために、私たち業界全体だけでなく医療全体にまで国民の不信と疑惑の目が向けられることは日本全体にとって不幸なことで、そのために国民自身が一番被害を受けている筈の社会保障費の削減に対して、抗議し改善を求める力強いムーブメントが起きにくくなっています。私たちは職業人の自らのプライドにかけて襟を正し、国民の不信を解くとともにあくまでも国民全体の福祉・医療の質の向上を図る立場で市民と連帯していく姿勢を欠かしてはなりません。 各種文書提供についてもう少し述べれば、患者さんの健康の向上に本当に利しているのか疑問です。文書作成に奪われる手間やマンパワー、経費はそのまま患者さんに向き合う時間を食いつぶしてしまいますし、第一に現在実際の歯科医療現場で行われている患者さんへの情報提供のスキルや情報量、スタイルは厚労省の想定するテキストベースの旧式な説明スタイルをとっくに凌駕しているわけで、医院ごとにそれぞれ工夫したやり方で情報提供を行わなければ診療自体が成り立たないところまで、社会の求めている歯科治療像はすでに変わってしまっています。医療機関ごとの特性に合った独自の情報提供の上にさらに国に義務付けられた無駄な各種文書を提供することなど、まさに屋上屋を架すごとくであり、資源と医療給付機会の無駄にすぎません。 例えば今回改定で国民にも歯科医療者にも何ら説明がなく、失活歯の漂白が保険診療から外されましたが、これなど臨床現場では医療的な根拠のない単なる数字合わせの処置として捉えています。 ただしもし歯科医師会が個々の算定項目に対して次期改定に対する要望を提出しても、まず国民全般の理解は得られません。毎日歯科医院へ訪れる患者さんは山ほどいるのに、歯科医療の本当の姿を理解している人はほとんどいないからです。しかし医療費改定が財務省と官邸主体で行なわれている現在、私たち医療者が逆転打を打つ唯一のチャンスがあるとすれば、国民に社会保障費や年金、財政政策等の持つ様々な問題点を医療現場からのレポートを含む分かりやすい資料を提供することにより正確な理解をしていただき、国民の大部分にとって『市場原理主義』が悪夢にすぎない事実を知っていただく以外に有効な方法はありません。情報量とプロパガンダの巧妙さの点で官僚に対抗することは困難ですが、国民を味方につけること以外に私たちのとるべき道はないのです。 現在、日本歯科医師会は政権与党内に私たちの理解者を一人でも増やすために、参議院候補者石井みどり氏を国会に送り込むために全力を傾注していますが、これはけっして業界エゴを押し通すために活動しているわけではありません。現在行政府を席巻している市場原理主義、または成長原理主義に対抗する目的からです。当面の目標は『クローズアップ現代』において国谷裕子キャスターに、「続く社会保障費の削減と国民の健康」といったテーマで特集番組を組んでもらうことにあります。(笑) 御手洗冨士夫氏(キャノン会長)が会長を務める日本経済団体連合会が本年1月1日に「希望の国、日本」(御手洗ビジョン)を発表しました。曰く、「消費税率を2011年度までに現行より2パーセント程度上げ、その後さらに3パーセント程度上げ、同時に法人税は実効税率を2015年度までに約10パーセント下げるべきだ。」と提唱しています。また政府の役割を再定義し、社会保障制度に関して「社会保障番号を導入し、公的年金を一元化する。税と年金保険料の徴収を一元化し、高齢者医療の財源方式を見直す。社会保障給付の伸びを高齢化で修正した成長率以下に抑制する…」と続けます。 少子高齢化の進行により労働人口が減少する経済成長率のマイナスを、「身の丈に合った社会保障給付」に引き下げ、徹底的な規制改革により成長率を維持・強化することにより出生率も上昇させることができると主張します。そして医療や最低賃金、失業手当などのいわゆるセーフティーネットについてはモラルハザードを防ぐために、極力必要最低限の水準に留めるべきとしています。 一方、経済同友会終身幹事の品川正治氏(財団法人・国際開発センター会長)は、この御手洗ビジョンに対して、「強者の論理だけに貫かれた、傲慢きわまりない代物(月刊現代 2007.4)」と批判し、「御手洗ビジョンを貫いているのは、経済成長が万能だという考え方です。成長原理主義と言ってもいい。…国民のための視点が欠けている。これからの日本に求められるのはむしろ『もったいない』の精神ではないでしょうか。」と批判しています。また橘木俊詔京都大学大学院経済学研究科教授は、著書「日本の経済格差」の中で「(1)日本の格差拡大は進行中ですし、貧困者の増加がみられます。(2)日本では経済効率を犠牲にせずに、機会と結果の双方において格差是正策を採ることができます。(3)格差是正策の基本は、教育、社会保障、雇用の分野にあります。」と述べています。 いったい日本の社会保障費はどんな国際的な水準にあるのでしょうか?1998年のOECDの統計によれば、社会保障給付費が国民所得に占める割合について、日本20.4%、アメリカ18.4%、イギリス33.2%、フランス40.9%、スウェーデン47.8%で、先進国の中では、貧困層の割合が17.1%(日本は15.3%で先進国中第3位)で先進国中第一位であり、国民全体を対象とした健康保険制度の存在しないアメリカに次いで、2番目に低く、決して高い水準ではありません。 また橘木俊詔氏は「構造改革を進めることにより全体のパイを大きくすることにより、下層の人にもパイのおこぼれが行き渡る」という主張に対して、実際は大きくなったパイの部分は少数の上層の人たちが独占し、また教育機会は親の経済状態により決まるために、貧困層は世代間で階層固定されていき、現在の日本においてやみくもな経済成長優先政策により社会全体が豊かになるというビジョンは幻想であるとも述べています。貧困者が固定化され増大するとともに益々貧しくなり、一部の富裕者が社会の富の大部分を独占する社会、格差の拡大が生み出す社会不安の経済的ロスも考慮に加える必要があります。 ノーベル経済学賞の受賞者であるJ.Eスティグリッツは2007年4月号の「月刊現代」のインタビューに応えて次のように述べています。少し長くなりますが引用してみましょう。「最も基本的な間違いは市場原理主義への信奉によって生まれた。つまり市場そのものがあらゆる問題を解決してくれるから、政府の役割を最小化していくべきだという考え方だ。民営化と貿易の自由化と規制緩和を重要視したのだ。だが大事なのは、政府の役割と市場の役割のバランスである。私は開発促進や貧困層保護で政府に大きな仕事をさせるべきだと考えている。産業界を成長させて雇用を創出させるにはその環境を政府が整えてやらなければならないのだ。二つ目の間違いは、公平性の問題を無視したことだ。つまり富の配分について考慮しなかった。コンセンサスを支持する者の中にはGDP(国内総生産)さえ伸びていけば最終的には皆がおこぼれにあずかれるという、『トリクルダウン理論』を信じる人もいた。だがそれは誤りだった。ラテンアメリカの国々ばかりでなくアメリカでさえ、経済がよくなったのに、貧しい人が増加するという現実に直面することになった。こうした不平等が広がり、格差が大きくなると社会や政治の不安定につながり、それが経済成長の障害にもなった。重要なのは、各国が公平性の実現に重点を置き、成長の恩恵が広く共有されるように手を打つことである。…グローバリゼーションが日本でも貧富の差が広がる原因になっていると思う。だがこの点はアメリカのほうが日本より深刻だ。社会が不平等であるし、セウフティー・ネットも医療制度も弱いからだ。格差社会に私が薦める処方箋は、教育にもっと投資して、非熟練労働者を少なくすることである。そして一つの職業から別の職業に転職しやすいように職業訓練プログラムを充実させ、累進課税をもっと徹底させ、低収入の人からあまり税金を取らないことだ。…(日本の景気回復について)いざなぎ景気以上にいいといえるような状況ではない。…そして日銀が金利を上げるのは誤りである。現時点でインフレになる気配や証拠はない。もしその政策が実行されれば景気の減速を招き、経済を停滞させる可能性すらある。…グローバリゼーションは、確かに恩恵をもたらしたが、犠牲も払わせた。この点は日本と同じだ。そしてグローバリゼーションのせいでますます貧富の差が拡大した。懸念すべきことは、最貧困層がさらに貧しくなったことだ。…」(月刊現代2007年4月号スペシャルインタビュー J.Eスティグリッツ「格差社会」解消の処方箋より引用) 経済効率を追求するためには格差が拡大しても仕方がない。そのためには医療費などの社会保障費は極力削減すべきであるという考え方に、我々医療者はどう対抗すべきでしょうか? また少子高齢化が進行中の日本が将来、生き残るためには、私たちがどう対応することが国民全体の幸福指数を高めることに繋がるのでしょうか? 単なる増点要求を行なうのではなく、国民に対して日本の未来がどんな姿であることが望ましいのか、医療従事者自身が市民に対し問題提起を行い、社会的に広汎な議論を引き起こすことが最も急ぐべき課題ではないでしょうか? 市場原理主義者たちは日本をカリカチュアライズされたアメリカ像に同化させようとしている気がしますが、そのアメリカには高齢者や最貧困者を除けば保険制度が存在しません。従って優れた給付を可能にする掛け金の高額な民間保険加入者だけが最高の医療を受けることができ、所得の少ない者は満足な医療を受けられないか、医療費のために破産するかを選ばなければなりません。日本の医療もこのような弱肉強食の医療環境に変貌させるべきなのか、私たち医療人は肝を据えて選択しなければなりません。実際に国民健康保険料の未納者は増え続けていますし、歯科医療において、保険診療と保険外診療との質的な差は開くばかりです。 WHOにも賞賛された日本の医療制度を崩壊させる責任は誰がとるべきか、10年後の国民の大半が苦しむ原因を誰がつくろうとしているのか、良心を持つ人々は銘記すべきです。 (1)レセプト完全オンライン化をどう捉えるか 2002年にまとめられたe−Japan重点計画の中の「4.行政の情報化」項目中に厚生労働省、文部科学省、その他の省庁の取り扱い案件として「医療の情報化」が組み込まれています。 平成18年8月3日(木)に行われた第1回の医療評価委員会(IT新改革戦略評価専門調査会に属し、平成18年8月2日発足→脚注1参照)において松田IT担当大臣は冒頭、「今、アメリカや英国、あるいはその他諸国も医療のIT化に一生懸命取り組んでおります。英国ではNational Program for ITというプロジェクトの下、2010年度までにイングランドをカバーする医療情報システムの確立に取り組んでいます。その節約効果は予想以上に大きいとのことです。 また、アメリカでは、ブッシュ大統領が2004年に年頭教書で医療のIT化を国家目標とすることを高らかに宣言し、2014年までに、EHR(Electronic Health Record)を普及させるべく取り組んでおります。 このような中、日本こそ最も立派なものをつくり上げる。それが世界標準となるものをつくるというのが、私の現在の心境でございます。」と発言されています。(以上首相官邸HPより引用) 過日承った技官のお話によれば、現在各医院で導入されている「電子カルテ」はレセプトから書き起こしたものであり、その真実性も証明されないために到底「電子カルテ」と呼べるものではなく、個別指導においても従来型の「電子カルテ」は改竄が自由であり信頼できないので参考にしていないそうです。厚労省のお墨付きをいただける「電子カルテシステム」はすべての入力時のログ(log:操作やデータの送受信が行われた日時と、行われた操作の内容や送受信されたデータの中身などの記録)が時刻認証技術により秒単位で記録され(タイムスタンプ)、電子データの改竄ができない仕組みになっています。またインターネットを通じて全国を一元管理する認証局へその都度診療情報が送られるもので、患者は本人認証を行えば随意に自分の医療情報の細目をあらゆる検査、画像情報を含めてのこらず開示を受けることができるものとしています。例えば健康保険証がLSIカード(脚注2)になれば、内部に搭載された大規模メモリーにあらゆる個人医療情報が受診ごとに記録され、患者は医療機関から医療機関へ個人医療情報を携帯したまま転院できますし、患者本人が任意にカルテ内容を検索し自分の受けた医療内容について調べることができ、投薬歴や検査結果を医療機関の間で共有することが可能になり重複投薬や検査を防ぐことが可能になります。 現在説明されている電子カルテの特徴をまとめれば、
一見患者中心主義のこのシステムに潜む構造的陥穽については後述することとして、その概要についてもう少し触れてみましょう。 本システムは原則的には平成23年に始動する予定で、小さな診療所や月間のレセプト件数が少ない場合については、2年間の範囲内で別に定める日と時期をずらしてオンライン化を実施する案が出ていますが前倒しされる可能性が出てきています。(現時点でISDNによる運用が予定されていますが、現在世間の大半のインターネット接続はADSLか光接続になっている現状では、各医療機関に新たにISDNを再度導入する手間と経費負担がふりかかることになります。) 医療システムの情報化で先行するとされる韓国の例では、1997年の通貨危機以降、財政改革の一環として医療費抑制などの医療制度改革が進められ、電子レセプト及びEDI(Electronic Data Interchange)などの病院内部の情報化が急速に普及し、「2005年の療養機関における情報システム導入率は、外来OCS(Order Communication System)75.6%、病棟OSC70.6%、薬剤業務システム69.1%、臨床病理検査システム68.5%、放射線システム68.7%、特殊診療管理業務60.9%、院内事務システムは96.8%、電子レセプト93.5%、となっており院内業務効率化システムの導入率は高く、特に電子レセプト及び院内事務システムはいずれも9割を超えていることがわかる。(アジアマンスリーニュース 2006年12月号 韓国における電子カルテの活用について より引用)」のように院内電子情報システムの普及は進捗しているようですが、一方「患者志向のu-Health(ユビキタス情報ネットワークに基づく健康医療システム)の実現に欠かせない画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)や電子カルテ(EMR:Electronic Medical Record)の導入率はまだ低く、それぞれ、47.1%と19.6%となっている。(引用:同上)」と報道されています。 2006年現在の韓国において、当初の予想より電子カルテの普及率が低い理由としては、中小病院においてEMR(電子カルテ)の導入における費用対効果の面でメリットが感じられないからと言われています。10数年以上に渡る長期の歯科医療蔑視・抑制策の下で、手ひどく痛めつけられてきた私ども日本の小規模医業形態中心の歯科業界に対して、一方的に行政サイドから号令をかけるだけで、決して軽いとは言えない新規のIT投資を強要する手口は、大企業に対する優遇姿勢と比較してみるとき容易に納得いくものではありません。医療の情報化という名目化で巨大なビジネスチャンスと利権が生まれ、官僚の新しい天下り先が確保されるわけですが、一連の不祥事に対する報復として歯科業界はどこまで踏みつけにされればいいのかやりきれなさを覚えます。 亡者の群れをも呼びおこす「一億総IT化」の掛け声は「バスに乗り遅れるな」とばかりに暴走した過去の忌まわしい記憶に通じるものがあり、その前にもっと人間一人ひとりを大切に取り扱わなくてはならないのではとの思いもありますが、「勝ち組」にしか価値を見出さない世の趨勢であり仕方のない部分もあります。したがって「電子カルテ」の実現にただむやみに反対するものではないのですが、ただ今の行政の進め方を見ていますとどうも胡散臭いものを感じるのは私だけでしょうか?
(2)セキュリティーへの懸念 知らしむべからずよらしむべし 国民は本当の「電子カルテ」システムの意味を知らされていません。いつものやり方ですが、行政はまず執拗なネガティブキャンペーンにより、医療に対する国民の信頼感を壊し、次に行政にまつろわない職能集団の牙を抜くことを考えます。(歯科医師会には牙など最初から生えていないとの見方もありますが)「電子カルテ」の本質は医療者性悪説に基づいた医療超管理体制の構築ですが、もともと日本の医療はスパルタ的な管理医療でしたからある種の煉獄が地獄に変わるくらいで大きな意味の違いはありません。 それよりも問題なのは、個人情報が本当に守られるのかという懸念です。昨今は毎月というくらい頻繁に大規模個人情報データベースからの漏洩が世間を騒がせますが、一度WEBに流出した個人情報はどんな手段を使っても二度と回収することはできません。 全国民の先天性疾患や癌や精神障害など重大な基礎疾患治療履歴だけでなく、各種検査データ、遺伝情報なども認証局(認証機関)には集積されるわけですが、もしこの膨大な情報に自由にアクセスできたら、その情報価値は利用次第で生物化学兵器級の破壊力を発揮します。 例えば保険業界に官僚が天下りするときに、全国民の遺伝情報を携えていけばとてつもない利益を保険会社は得ることができますし、行政職への採用に際して密かに認証局のデータを参照することも考えられます。権力者への臓器移植にHLAが一致する国民のリストを製作することも可能ですし、不穏当な人間を社会的に抹殺する目的で偽の医療情報を入力し、それを意図的にリークすることもありえます。もちろんこれらは官僚諸氏がすべて犯罪的性向をもっているという偏見に基づいた妄想であって、決して私自身が信じているわけではありません。しかし2004年に起こった社会保険庁における政治家の国民年金未納者情報の不正閲覧に関係して処分された職員が300名に及んだ事実に一抹の不安を感じてしまいます。あの場合、当初は一民間人である女優・江角マキコ氏の未納情報が閲覧された時点では問題とされなかったのですが、権力者である政治家の個人情報が閲覧された時点で初めて職員の処分に繋がっていきました。 認証局に集積された多くの一般国民の情報が漏れたとしても、権力者でないかぎりそれに反撃する手段はほとんどないのではないでしょうか? 確かに個々の国民にとっては個人認証の壁を突破しなければ他人の医療情報を覗き見ることはできませんが、認証局ではアクセス権を持つ者なら誰でも任意の国民の心身の情報を閲覧できるわけで、情報の集積こそ権力の礎と信じる者にとってはまさに宝の山に違いありません。最初は全国民の医療データを分析・研究することにより、医療制度改革に役立てる等の名目で資料の閲覧が行われますが、そのうちにアクセス権保有者の範囲は必要以上に広がっていく心配があります。不正閲覧を防止するシステムや公務員による不正閲覧が起きたときの厳しい罰則規定などがなぜ整備されていないのか理解に苦しむところです。 (3)自分(行政)に甘く民(医療者)に厳しいモラル要求 e-japan構想において電子政府の実現を謳っていますが、現在のところ行政が考えている電子政府像は、ジョージ・オーウェル的な超管理社会、IT技術を駆使して高度に国民を情報管理する姿ばかりが想像されてしまいます。 例えば、平成17年4月1日に施行されたe-文書法では民間事業者等に対して書面の保存等が法令上義務付けられている場合について、原則としてすべての場合に当該書面に係る電磁的記録による保存を推進し、例えば「国税関係書類をスキャナで読み取る際に、電子署名が行われている当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項に財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すこと。」などと定めています。このように民間に対する改竄不能の電子文書の要求は次々と一般化していますが行政自身はどうなのでしょうか。 「電子カルテ」の特徴はタイムスタンプによる改竄防止と作成者の電子認証ですが、e-政府こそまず率先して、会議や内部で取り交わされるすべての行政文書にタイムスタンプを押し、作成者を電子認証して、定期的に国民に閲覧したらどうかと問いたいところです。法律で定められた正式な会議を開かずに、政商達が恣意的な提言を繰り返す諮問会議の額にまずタイムスタンプを押していただきたい。 政治家と官僚はつねに流動するため、失政にたいする個人責任を問うことを困難にしています。政治家についてはまだ国会などの発言が公式記録されていますが、事実上日本を動かしていると自負している官僚に対しては、誰がその政策のアイディアを出し、あるいは誰がその責務を回避し、誰がその責任を負うべき立場だったのか、一般国民は容易に知ることはできない仕組みになっています。医療側にだけ苛烈なモラル水準を要求し、国民にも様々の医療サービスの低下を受容させるのならば、まず率先して官僚こそがその責任の所在が明確化するように、すべての発言や文書にタイムスタンプを押すべきだと思います。自分達が国家を動かしているという意識の下に、国民の選良である政治家達は所詮トラベラーにすぎず、自分達官僚の傀儡として見下し、いざとなると責任を曖昧にして天下ってしまう自らにこそ厳しいモラル水準を実現してこそ初めて我々医療関係者は納得して「電子カルテシステム」に賛同しようではありませんか。 ましてや全国医療従事者の血涙を搾り出すような一方的な負担の下に生まれる巨大マーケットの利権を貪ることを目論んでいる官僚がもし存在するとしたら、私たち医療者だけでなく国民も決して許してはなりません。まず関連業界への全面的な天下り禁止法案を通過させてから物を言ってもらいたい。 時代の趨勢として実効ある医療データベースを築く必要性については、私も充分に理解しているつもりです。またそのデータベースの公正で科学的な分析は次世代の医療にとって欠くことのできないプランであることも充分に理解しています。しかしその運用については、以上に述べたように個人情報の守秘義務、運用の公平性について最大限の配慮が払われなければならず、特定の企業や個人を潤す目的で行なわれてはならないと思います。また行政は少なくない設備投資負担を強圧的に強いることにより弱小な医療施設を切り捨てることなく、必要充分な政策的補助策を講ずるべきことは当然のことだと考えます。ただお上の権威を振りかざし、300万円以上もかかる設備投資を強要するとしたら、恐喝や強盗と変わらず、日本に民主主義は存在するとは言えないでしょう。 脚注1:医療評価委員会(首相官邸HPより引用) その目的:
構成委員一覧 石垣 武男 名古屋大学医学部 名誉教授 大熊 由紀子 国際医療福祉大学大学院 教授 國領 二郎 慶應義塾大学総合政策学部 教授 田中 博 東京医科歯科大学 情報医科学センター長 教授 平井 愛山 千葉県東金病院 院長 藤沢 久美 法政大学ビジネススクール 客員教授 三宅 信一郎 財団法人三宅医学研究所 理事長 山本 隆一 東京大学大学院情報学環助教授 (五十音順 敬称略) 脚注2:LSIカード 住民基本台帳カード、公的個人認証、運転免許証、健康保険証、パスポート、介護保険被保険者証などへの利用が計画または一部実施されています。 否応なく進行していく少子高齢化の波の中で、やがては民間保険への移行が起こることが予想されます。歯科医療の現場は高度な給付内容を持つ民間保険に加入する人たちを対象とした歯科医療と極めて貧弱な給付しかない公的医療保険制度の形骸に二極分化していく可能性があります。 個々の歯科医師もそのような社会的環境の一要素として存在しているわけで、どんなに一人が社会的正義感だけでがんばってみても、自分自身の研鑽や必要な医療設備の更新もままならず、ましてや家族を養っていくこともできません。 しかしそこには病める者や貧しきものを救うという本来の慈愛の精神は存在せず、勝てば官軍とばかり、富裕層だけを対象とした「最先端歯科医療」だけが幅をきかす世の中になっていくでしょう。 私たち医療従事者がいつも忘れてはいけない原点は、市民の健康維持に奉仕し弱いものや貧しいものを助けるという医療の本質にあることは間違いありません。では明日の日本の歯科医療に未来はあるのでしょうか。私は私たち歯科医療関係者及び歯科医師会がすべての歯科医療に関わるステークホルダーを満足させるために努力すれば自ずと道は拓けるものと確信しております。 本来、純粋な資本主義社会に於いて、企業は最小のコストで最大限の利益を追求することに奔走し、そこに社会性や倫理観の入る余地はありませんでした。しかし近年、社会の中で活動する企業の社会的責任のあり方としてCSR(Corporate Social Responsibility企業の社会的責任)という概念が注目を集めています。これは企業のあるべき姿として、企業活動における環境に負荷をかけない姿勢、社会に貢献する姿勢、経済的側面の三大要素を重視することが必須であるとする考え方です。利益追求の立場からは企業の社会的貢献活動は相反するように考えられますが、実際にはCSRは企業にかかわるすべての利害関係者、例えば従業員、顧客、関連会社、企業の属する経済圏で暮らす人々など、いわゆるステークホルダー(Stakeholder)の充足度を向上させるだけでなく、従業員の意識向上、企業の社会的関心度・好感度向上、新しいビジネスチャンスの開拓につながる重要な条件として評価されるようになっています。 歯科医療における最大のステークホルダーはあくまで患者さんであり、その母集団である市民です。私たちが日々の診療や公衆衛生活動を行なうに際し、常に専門職として患者さんの本当の健康につながる歯科医療を志し、患者さんが自らその健康を守る支えとなり、また地域社会に貢献できれば、厚労省やマスコミの継続的なネガティブキャンペーンに打ち勝ち、市民の歯科医療に対する賛同者を増やすことができるでしょう。 迂遠なようですが、これこそが最も今、歯科医師会に必要とされていることであり、日本の歯科医療を守り向上させる効果的な手段であると考えています。 |
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