■ 今月のちょっといい本
ハイエナ資本主義
著者:中尾 茂夫
発行:ちくま書房342
定価:\720
ISBN4-480-05942-3 COO233

「ハイエナ資本主義」という書名から想像されるのは、反グローバリズム本ですが、著者は反グローバリズムにも、グローバリズムにも与せず、『半グローバリズム』だと主張しています。「チャルマーズ・ジョンソンは『東アジアの指導者の多くが、グローバリゼーションとそれに続いた危機は、実際には国民に苦痛しかもたらさず、目に見える利益はほとんどなかったことを知っている』と結論づける。(バブルの崩壊)で価格の下がった不動産や株式を買い漁り、所有権を剥奪し、ふたたび高値で転売する欧米風の不良債権ビジネスの席巻ぶりから、アジアでは、自身に対する『クローニー(談合)資本主義』批判よりも、むしろ欧米型に対する『ハイエナ資本主義』批判が高揚していると、ジョンソンは警鐘を鳴らす。」つまり「ハイエナ資本主義」とは、コネクション(人脈、コネ)やクローニー(談合)で動くアジア型資本主義を、規制撤廃と株式市場を優先した直接金融重視により、統一的な世界基準の会計基準のもとに開放し、いわゆるアメリカンスタンダードに従わせ、外資の急激な投入を行い、高騰する株式市場で利鞘を稼ぐと素早く撤収し、バブルが崩壊した後は、「改革という美名の下でアジアの優良物件を破格の割安価格で買い漁るアメリカ資本の腐敗ぶり」を指しています。その結果、バンコクでは、中心街をベンツが走り回り、新宿をはるかに凌ぐ高層ビル群が立ち並ぶすぐその脇に、巨大なスラムと売春街が増殖する極端な富と貧困の乖離が作りだされています。本書の読後に感じることは、アメリカの絶対的な勝者としての力とそのダブルスタンダードです。今、日本では「構造改革なくして景気回復なし」だとか「骨太の方針」など、耳あたりの良いスローガンが叫ばれていますが、果たしてアメリカンスタンダードの衣をなんとか被ることに成功したとしても、その結果現れるのがごく少数の超富豪だけで、社会の階層化が進行していくだけだとしたら、国民は本当の意味で幸福になるのでしょうか?