■ 今月のちょっといい本
デモクラシーの帝国 アメリカ・戦争・現代世界
著者:藤原 帰一
発行:岩波新書802
定価:\740
ISBN4-00-430802-X CO231

ソ連の崩壊により、現在の地球上にアメリカに対抗できるような軍事力と経済力を持つ覇権国家はいなくなりました。

「権力が集中することによって、他国との協調や協議に頼る必要が少なくなる‥‥実際、ブッシュ政権のもとで展開している国際関係は、複数の諸国が利害を調整する場であるとは、とてもいえない。そこにあるのは、ワシントンの提案に各国の賛同が求められ、仮に各国の賛同が得られなくてもそれが結果にされてしまうという一方的な過程に過ぎない。アメリカの内政を世界に拡大したものがブッシュ政権にとっての外交なのである。‥‥単独行動主義の裏にあるのが、国際機構や制度を『邪魔者』として扱い、実質的に排除する政策である。‥‥国際機関が加える規制も、アメリカだけに関しては適用を拒否する、という政策が導き出される。京都議定書拒絶やABM条約の廃棄もその一例といえるだろう。そしてさらに突出した事例が、国際刑事裁判所(ICC)への参加問題である。‥アメリカによって裁かれることはあっても、そのアメリカは裁かれることはない世界が生まれたことを示している。」

アメリカは世界の一次エネルギーのおよそ25.8%(1,999年)を消費する最大のエネルギー消費国であり、また世界の炭酸ガスの約25%を排出しています。(日本は1.75%。)資産1500億ドル以上の富豪の8割が集中する国アメリカ、圧倒的な権力と軍事力と経済力が集中する国アメリカ、今やアメリカが規定したルールの中で世界は動き、アメリカの正義が世界を裁き、断罪し、罰を加える時代です。特にブッシュ政権になってから、その覇権主義、内向きの論理は表面化し、同盟国を含めた世界の独立国にあからさまな服属を強いています。そしてそのアメリカの行動を実際に決定しているのは、大統領でも二大政党でもなく、ロックフェラーやヴァンダービルト、モルガン、アスターなどの財閥であり、その一握りの遺産相続人達です。世界の富の大半を独占するのも彼等ならば、世界の政治、経済の帰趨を決定しているのも彼達であり、実質上世界は超富豪の彼らとそれを取り囲む数百名程度のエスタブリッシュメントによって統治されています。

では、このアメリカ帝国とも言える覇権はいつまで続くのでしょうか?100年、それとも200年でしょうか?歴史上ローマ帝国も唐やハプスブルク帝国もオスマン帝国も永遠に続いた例はありません。もしアメリカに対抗する勢力が現れるとしたら、デリバティブ取引などを駆使する錬金術的株式投資を中心とした市場主義を超える新たな原理が世界を席巻するときだと思われます。そしてそれは中国を盟主とする東アジア経済圏である可能性が考えられます。その時、日本がまだ存在するならば、顔色を伺う先がワシントンから北京に変わるわけです。