■ ちょっといい本バックナンバー(3)
「アングロサクソンは人間を不幸にする」
著者:ビル・トッテン
発行:PHP出版社
定価:1,150円(+消費税)ISBN4-569-61272-5
2-Anglo_Saxon ビル・トッテン氏は、72年日本で株式会社アシストを設立。 今までに「日本は悪くない」「日本人はアメリカにだまされている」「目を覚ま せお人好しの日本」(いずれもごま書房刊)などの著書があります。コンピュー タ用パッケージソフトウェアの販売、技術サポート、教育およびコンサルティン グを業務とする株式会社、アシストの代表取締役で、アシストは売上高154億円、 社員数720名の会社であり、コンピューターソフト業界有数の企業に成長していま す。本書の中で筆者は次のように主張しています。『いわゆる外圧により、日本 は数々の規制を緩和し、政府によるコントロールから市場メカニズムの支配へと いう、アメリカ型の経済システムの導入を急いでいる。ただアメリカ型経済シス テムの無批判な模倣に、はたして危険は潜んでいないのか?最近ではIT革命の名 のもとに、ネットベンチャーの起業ブームが巻き起こり、ストックオプションに よって巨万の富を得る者も現れてきた。これらは、日本経済回復への起爆剤とし てマスコミでもてはやされ、日本経済に革命 的変化をもたらすであろうという風 潮が形成されつつある。現在のこの風潮を、著者は非常に冷ややかな目で眺めて いる。本当に、いま日本がとろうとしている進路の先に「幸福」があるのだろう か。それどころか最悪の選択をしていると警告を発している。』(『』部分は速 読本舗より改変、引用いたしました。)『国民の約99%は賃金収入で生活をしてい ますが、利子だけで生活できる金持ちが日米どちらにも1%程存在します。米国で はその1%の金持ちが財力にものをいわせて、狡猾にプロパガンダ(宣伝活動)を 牛耳り、政府に圧倒的大多数の国民よりもトップ1%を優先させるような仕掛けを 作り上げました。また99%の国民はその不合理を受け入れるよう、そのプロパガン ダに騙されています。その結果、米国の富や収入の分配は偏り、まるで第三世界 のように富の集中と貧困が混在しています。さらに、米国の支配階級は、中国の 4人組のごとくG7(ギャング・オブ・セブン)を結成し、他の西側諸国が同じよう に財力と権力で社会を奪略するよう手ほどきをしています。そして今、そのギャ ングたちは日本をもそのゲームに引き入れようとしているのです。私は 米国に民主主義と公平さを取り戻す助けをしたいのです。そして日本の友人達が 米国の巧妙な策略やプロパガンダによって植民地化されないように支援したいと思っています。』 ビル・トッテン氏のホームページより引用。つまり1%の人間だけが、 勝利の果実を味わうことのできる徹底した優勝劣敗の社会は、市民を不幸にする と主張しています。一読の価値ある書。










「脱アメリカが日本を復活させる」
著者:ビル・トッテン
発行:徳間書店
定価:1500円(+消費税)ISBN-19-861255-2II
2-Anglo_Saxon今月は2冊目もビル・トッテン氏の新刊です。物事は反対側から眺めるとまったく 違った様相を呈するものです。正直言って最近までビル・トッテン氏は日本での商売 をやりやすくする為に媚を売っている、変わった外国人という認識でした。しかし、 バブル経済とその崩壊、ITバブルとその失速、日本人が働いても働いても、その利益 は米国債と言う形で、すべてアメリカに吸い上げられてしまう国家間搾取の構造な ど、際物とは言い難い、説得力のある論理構成は一読の価値があると思われます。 (ちなみにアメリカは米国債を絶対に払い戻すことに応じません。)アメリカによる 巧妙なプロパガンダにより、覆い隠されている戦略的な真意とは何か?是非、本当の 意味でのグローヴァルな世界観を構築する一助に本書を読んで欲しいと思います。 ページ数も少なく平易な文章なので2時間ほどで読めますが、必ず衝撃的なanother perspectiveを体験できるでしょう。










「死と骨の習俗」藤井正雄 ふたばらいふ新書
ISBN4-575-15285-4 819円+消費税
「死と骨の習俗」生の裏側には常に死が貼りついています。私達の生きる土壌も水系も食物も呼吸する空気さえも、すべて膨大な過去の死の集積から成り立っています。仏教で言う灰身滅智(けしんめっち)とは、心身とも滅し尽くして涅槃に入るということですが、現代医学のひとつの考え方によれば、我々人間は過去から未来へ向かい、DNAを運ぶ肉体の船に過ぎないそうです。その乗り物がいささかの情念を持ち、意地を持ち、悪意を抱き、あるいは慈しむ心を持ち、また哀しみにくれるわけです。神の目に入った小さな塵の如く、大いなる自然の摂理からは逸脱し、刹那的に宇宙の一隅にはじける泡沫が我々なのでしょうか?

死は未開のどんな文明においても、怖れと受容からなる根源的な感情により彩られています。祖霊崇拝、悪霊への怖れと忌諱、死者への愛惜、哀悼など、人は日常生活の曲がり角ごとに死に出会い、自らの儚さと不条理感を確認します。本書は散骨や髑髏、ミイラ、舎利信仰、骨仏など死を巡る様々の興味深い習俗を紹介しながら現代人の持つ死生観を検証しています。お盆の季節、先祖を偲びつつ本書を紐解くのも供養になるかもしれません。











「マリノフスキー/レビ=ストロース」編集責任 泉靖一
中公バックス 世界の名著71 ISBN4-12-400681-0
定価本体1,500円+消費税別
マリノフスキー/レビ=ストロース 本書は全集物の一部で、マリノフスキーの「西太平洋の遠洋航海者 寺田和夫・増田義郎訳」とレビ=ストロースの「悲しき熱帯 川田順造訳」を掲載しています。両者とも単行本としては、地方の書店で購うことが困難であるため、本書を取り上げました。人間の意識の研究が歴史学とすれば、我々が意識することのない社会構造と機能の研究が社会人類学と言えます。レビ=ストロースの「悲しき熱帯」と言えば、構造主義の古典として有名ですが、そもそも構造主義とは何だったのでしょうか?サルトル流の実存主義によれば、人間に主体としての自由意思と理性を認め、人間は主体的に歴史を変えていく機会を持っているものと考えます。しかし、構造主義では人間の意思とは無関係に、社会の持つ機能的な構造自体が歴史を造って行くと考えます。(歴史は、重なり合った意識の層位の過程であって、人間の意志がその形成に参与する余地はほとんどない。)自己の行動、思考ならびに言語でさえも、多くの社会構造の重層関係によって決定され、我々に自由意志と理性を主体的に発揮する場面を与えません。これを敷衍すれば、最近流行となりつつある、少年犯罪の原因も、その責任は少年個人にあるのではなく、社会構造そのものにあることになり、虞犯少年個人の犯罪背景の調査と、その更正を図るだけでは、類似犯罪の再発を防げないことになります。古典的な哲学の系譜を辿り、現在の日本を導く力のある思想は存在するのか?一考してみるのも興味深いと思われます。










エゴン・シーレ 二重の自画像 「エゴン・シーレ 二重の自画像」 坂崎乙郎
平凡社 ISBN4-582-76238-7 1,200円(消費税別)
芸術に意義があるとすれば、それが大脳で創り出される装置であり、個人的な追体験 を誘発するシステムであるという点でしょう。偶然の生み出す機会を利用するアクションペインティングなどのパフォーマンスでさえも、それを目論み、素材を選ぶ段 階で、すでに作者自身の生の人格が関与することを避けることはできません。非凡な 才能は、他者に驚異に満ちた精神的な追体験を引き起こし、それゆえ優れた芸術作品 は我々を強く揺り動かします。世界とその中に満ちている情動を、巧妙にあるいは際 どく切りとって呈示してみせる才能が、我々に画期的な啓示を与え、深い感動を生 み、あるいは隠されていた深層の記憶に火をつけます。 世紀末のウィーンに生きたエゴン・シーレ、グスタフ・クリムト、オスカー・ココ シュカ等の群像が、時代を影絵のように飛びすぎる様相を本書は扱っています。 宝石のような色彩の氾濫、過剰とも思える装飾性で対象を埋め、覆い尽くしていくク リムトは19世紀末的快楽主義と耽溺を示しています。一方、銃弾が左耳の蝸牛殻を破 壊する以前のココシュカは、熱狂的で破壊的であり、冷酷で辛らつでもあります。そ して両者に影響を受けたシーレは、傷つきやすく、挑発的、スキャンダラスで、不安 と絶望に満ちています。世紀末のウィーンの波瀾に満ちた憂愁を少しだけ探検してみませんか。










簡素に生きる 「簡素に生きる シンプルライフの思想」 太田愛人
信濃毎日新聞社 ISBN4-7840-9845-3 1,600円(消費税別)
現代文明という知恵の実を味わう以前、本来人は自らが所属する文化が、その基盤に隠している普遍的情動や、生物がすべて共有する原初体験というべきものを持っていました。そのような体験を生み出す心の領域を、カール・ユングは集合的無意識と命名し、集合的無意識から人生の目的と意味が引き出されると考えました。集合的無意識は、濃密なアミノ酸や各種ミネラルが溶け込んでいる原初の海であるとも言えます。ここからわたしたちの個々の意識が生まれてきます。私達、現代人は常にある種の脅迫観念に苛まれ、個人としての自分にあまりにも大きな要求と期待をかけすぎます。欧米文化のもとで生きる私たちは、一人一人がバラバラで、孤立した自己をもっていると教えられます。高度に情報化、抽象化が進行した社会において、人はこの原初の意識から切り離され、まったくの根無し草として、すべての事象に立ち向かわなければなりません。しかし、求めるものが例えすべて叶えられたとしても、私達は決して満たされることはないでしょう。新車を買えば、そのローンを払うために今までよりもっと多く働かなければならなくなり、会社で昇進すれば、さらに上部ヒエラルヒーへの上昇を望むようになります。幸せの青い鳥は自らの外部には決して棲息せず、不安と怒りに満ちた欲望から逃れることはできません。本書で取り上げている人々、岩波茂雄、ディオゲネス、島崎藤村、野村胡堂、エーリッヒ・フロム、鈴木大拙などが実践した『簡素な生活』に私達は、何を見、何を思うべきなのでしょうか?