筆者は、15年前に大使夫妻の私設秘書としてスウェーデンに渡り、社会福祉の研究を行なう目的で、独力で同国に生活の基盤を築き、ストックホルム大学で研究を続けています。ある国の民族性や政治機構は地政学的な理由から、成立していく側面があると思われますが、スウェーデンの場合、北極圏に一部が属する厳しい自然環境のため、合理的な方法で、効率的に、公正に政策を決定し、助け合わなければ生き残れなかったという面があると思われます。筆者はスウェーデン人のイメージとして、
- 争いや対立を避けようとする意識が高く、理想として同じ考え方や意見でまとまれるよう、話し合いを通してできるかぎりの努力をする。
- 芸術化タイプというより,自然科学的思考。合理的。プラクティカル。
- 不法・不正に対して妥協せず、高度の遵法精神を持つ人道主義である。
と述べています。
『スウェーデンの社会保障の特徴は、イギリスなどの社会保障が貧窮者を対象としているのに対し、スウェーデンのそれは労働者階級のみならず、中産者階級を含めた国民全部を包括する社会保険を中心に、基本的経済保障を行なっている点である。』『福祉国家の目的は、大きな変革と社会的不穏から社会を守り保持することで、福祉国家社会の連帯の目的とするところは一人一人が各々の価値を持ち、人間の福祉を守るための共同義務を遂行すること。』『ニューリベラリズムの支配する国々―イギリス、アメリカそしてある意味ではカナダを含めて、多くの国々が福祉国家社会の目的を放棄してしまった。』『10%の失業を認めるということは、社会の共同体から大きなグループを締め出すことを意味する。』『イギリスそしてアメリカでは、大量の貧困がぶり返しつつある。アメリカでは、2000万人の人々が飢餓と貧困に陥っている。』『ニューリベラリストの課税引き下げの言い分は、金持ちが労働意欲を高めるために、より豊かになる必要があること、また公的扶助の切り下げについては、貧乏人はさらに貧しくなると、もっと働くようになるというところにある。』『福祉国家スウェーデンの努力がグローバルな資本の論理の前に屈服せざるをえなかった。しかし、スウェーデン人は、すべての国民にとって、より平等な社会をめざすためのたゆみない努力を、忍耐強く続けていく。』示唆に富む内容であるとともに筆者のパワーを感じさせます。国家がその国民を幸せにすることを考えているのか、それとも国民を支配することを最優先しているのか、原点に返って省みる義務が、有権者には常にあると思います。