「熊の敷石」
著者:堀江敏幸k
発行:講談社
定価:1400円 ISBN4-06-210635-3 COO93
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芥川賞受賞作。奇妙な表題はラ・フォンテーヌの寓話「熊と園芸愛好家」に由来しているらしい。孤独な老人と仲良くなった熊は、老人が昼寝をしている間、いつもわずらわしい蝿を追い払ってやるのであった。ある日、老人が熟睡していると、老人の鼻先に一匹の蝿が止まり、なにをどうやっても追い払うことができなかった。「忠実な蝿追い」は「敷石をひとつ掴むと、それを思いきり投げつけ」、蝿もろとも老人の頭を潰してしまう。無知な友人ほど危険なものはない。賢い敵のほうが、ずっとましである。冒頭の熱い熊の毛皮が蠢いている小道を歩くイメージ、両目を縫い付けられた熊の縫いぐるみ、先天性に両眼を欠如した愛児など、傷ついたむごい情景が淡々と記述されています。古い友人と久しぶりに合う。旧交を暖める筈の邂逅は、友人の抱えるいくつかの『不幸』をなぞる体験になる。自分は級友にとって敷石を投げつける熊なのか?不思議な読後感がある作品。他に「砂売りが通る」「城址にて」。「砂売りが通る」はこの作家の特質を良く表わしていると思われる作品。誰もが持っている、鮮烈な若さの記憶が、何気ない日常の風景から一気に蘇ってくる体験。どこにでもある出来事なのだが、なぜか切ないほどの鮮やかさをもって、二度と帰ることのない過ぎ去った過去への渇望が、哀切と輝きをもって心を打つ。
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