My Funny Valentine / The Best of Chet Baker
これが好き、あれが嫌いという感覚は人それぞれのものだから、自信を持って薦めたアルバムが、まったく受け入れられなくても、それは神のみぞ知る運命、仕方のないことです。横尾忠則はかつて「インドに行ける人と行けない人はカルマkarma(宿業)によって、決まっている」と喝破していました。チェット・ベイカーの背徳の歌声を耳にして、昼も夜も分かたず、虜になってしまう人もいれば、CDをそのまま見捨ててしまい、未来永劫近寄らないという人がいても、前世からの宿縁、カルマはその善悪に応じて果報を与え、死によっても失われず、代々伝えられるものだそうですから仕方ありません。 ちょっとバーボンなど嗜みながら聴き入れば、ハスキーボイスの妖艶な美女がサテンドレスを煌かせながら、少しけだるく、しっとりと歌い上げるイメージが浮かんできます。クールでレイジーな歌声とやさしく繊細で、あたたかさを感じさせるトランペットの音色、これが男性のものだったなんて。戸惑いを覚えるあなた、恥ずかしくはありません。ムネオさんだって、マキコさんだって、泣きたいときには泣いているじゃありませんか。チェット・ベイカーは50年代のウェストコースト・ジャズ全盛時代に活躍し、「真夏の夜のジャズ」のジュリー・マリガン等とカルテットを結成しましたが、麻薬常習者として逮捕され、以後、捜査を逃れるため、ヨーロッパを転々とし、途中ドラッグが原因で、マフィアに前歯をすべて折られ、生活保護を受けていました。74年に奇跡的な復活を遂げ、(良い歯医者に出会ったのでしょうか?)86年にドイツ、ハノーバーのコンサートで生涯最後の美しく燃え尽きるような演奏を行った2週間後、アムステルダムのホテルで謎の転落事故を起こし、死亡するという破滅型の人生を送っています。 今夜は密かに泣いてみたいあなたに、こっそりお薦めします。
UCCV-4045 UNIVERSAL CLASSICS &
JASS,A UNIVERSAL MUSIC COMPANY
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