■ 今月の推薦盤 [JAZZ]
CONCORD for Apres’-midi Grand Cru
コンコード・フォー・アプレミディ・グラン・クリュ
一人の優れたプロデューサーの感覚は平凡な千人の常識に優る。民主主義の世の中でも、残念ながらこれは事実です。今、日本中で町おこしや、村おこし、商店街の活性化などが必死に行われていますが、努力している割には、新鮮な感動や体験を与えてはくれません。似たようなイベント、どこかで聞いたような惹句(コピー)、結果の予想できる埃だらけの疲労感。貴重な人生の一部分を浪費してしまった後悔だけが残されていきます。このボーカルとイージーリスニング中心のオムニバス盤は、タワーレコード発行のフリーマガジン『bounce』誌の元編集長、橋本徹氏が選曲したカフェバー用BGM集です。氏は'99年11月、渋谷区神南にカフェ・アプレミディをオープンし、音楽から、インテリア、メニューまで、橋本氏の感性が光るスポットとして、その当時、話題になりました。カフェ・アプレミディ・シリーズとしてたくさんのCDが発売されていますが、まさに『やり手』を絵に描いたような人物です。ニーチェは大衆と対比させる形でしか、超人を語ることができませんでした。優れた才能も、我々幾多の凡俗がいてからこそ存在するということに慰めを見出しましょう。このような嫉妬のこもった慰めのことをルサンチマンressentimentと呼びます。4.のGolden Lady/The Stefan Scaggiari Trioが収穫でした。
VICP-61925 ビクターエンテインメント株式会社
GROOVIN’BLUES/JUNIOR MANCE TRIO&ERIC ALEXANDER
Junior Mance(p) ジュニア・マンス、Chip Jackson(b)チップ・ジャクソン、Idris Muhammad(ds)アイドリース・ムハメッド、Eric Alexander(ts)エリック・アレキサンダー

私たちは、ともすれば歴史は直線的に進化していると誤解しています。産業革命以前の庶民の暮らしに比べ、我々がいかに進歩したことか、彼らはコンピューターも携帯電話も持っていないし、相対性理論だって知らないじゃないかと。でもこの歴史理解が大きな誤りであることは、バッハやモーツアルトやベートーベンを思い浮かべるだけで、すぐに実感できます。何世紀もの時の試練を経ても、なお演奏家に新たなインスピレーションを与え続けるモチーフの芳醇さと精妙さ。先達が蓄えてきた技術や概念を継承することにより、物質文明では確かに私たちの方が、相対的には優位にあるかもしれませんが、社会を構成する一人一人の感性と知性、悟性、情操、倫理観が、技術の進歩に相応して別に高まったわけではありません。ここに歴史の根本的悲劇があり、人類の将来を左右する危うさがあることは、説明するまでもないでしょう。核兵器や遺伝子工学、各種情報技術、非対称戦を勝ち抜くためのゲーム的軍事技術、様々のハイエナ資本主義的詐術、これら神の鉄槌に等しい破壊力をもったテクノロジーを、知性の基盤構造に関しては氷河期末期のクロマニヨン人と変わらない私たちが無謀にも振り回しているのが現代の実相です。(もしマンモスを追いかけていたクロマニヨン人の赤ん坊を、現代につれてきて、学校教育を受けさせれば、何ら現代人と変わらない知性を示すはずです。)

だいたいアメリカの敵は人類の敵という傲慢な理屈で、強引にイラクに鉄拳制裁を加えようとしているブッシュのどこが、古代のプラトンやアリストテレスより優れているのでしょうか?そのような愚かな知性が人類の命運を左右するテクノロジーを支配しているのが現代社会なのです。

いささか脱線してしまいましたが、とってもゴージャスな本アルバムでも聞いて、今ここに生きていられる小さな幸せを噛みしめてください。
MYCJ-30152