■創立百周年記念松歯学術大会
中信地区共催学術大会
「前歯審美補綴の成功要件」京都府開業 茂野啓示先生
日時:平成15年10月18日 場所:松本市歯科医師会デンタルホール
初めまして。茂野と申します。(中略)私の持論の中にありますのが、どこで開業しても変わらないということです。私の相棒であったDr.西川という方が甑島という鹿児島の西側の無医村で開業したことがあるのですが、さすがにそこまでいきますと同じだということが言えないですけれども、本土の中では変わらないですね。では何が変わるかというと要は、それは診療している側の意識であり、診療している側の意識がはっきりしているなら患者さん側の意識を少しずつでも、変えていけばいいのではと思います。私が最初に診療し始めたのは岐阜の方ですが、来る患者さんのほとんどがサンプラ冠ばかりでした。そういうのに慣れていますので、うちは田舎だから、こんな診療ができないとかいうことはないですね。ですから自分の思ったとおり、一番いいと思うものを患者さんに提示して、それを患者さんが受け入れさえしてくれれば、それは日本中どこへ行っても変わらないと思います。冒頭こういう話をなぜさせていただいたかと申しますと、ちょっと先ほど出ましたように需給関係が逼迫していまして、患者さんが歯科医を選択することができるようになってきた。ですから選択される側にまわればいいですね。それには様々なトリートメント・オプションというものがありますから、ニーズに合った患者さんの求めるものを提供できるということが一番いいのではないかと思います。ですから例えば自分がパーシャルデンチャーが得意であれば、それに特化してそれを必要とする患者さんに来ていただく、それが一番いいのではないかと思います。たまさか私はスタディ・グループを抱えておりますので、様々なトリートメント・オプションを持ちまして、それをスタディクラブに提供したやる必要性がありますので、ですから色々なことをするわけなのですが、でももうあまり色々なことをするよりも、むしろ自分の一番得意なことに特化していくことが一番じゃないかと思ったりします。今日本当にお招きいただきましてありがとうございます。私も実は審美とは自分の中で、10年間あたりまえにやっていたつもりだったのですが、でも先ほどもお話がありました師匠のレイモンド・キムが今年亡くなったのですが、彼にいつも言われていたのは、『修復治療というのは歯肉を傷つけてはいけない。生体の中であたりまえのように存在する必要がある。そして存在するのだから生理的なものでなければ、それは成立しない。審美的なことに今フォーカスが当たっているが、それはひとつの流行だろう。』とそんな風に去年、ディスカッションをしたときに言われたことがあります。まさにそのとおりで、先生方もそうであるように、私も審美的なことはあたりまえのことだと思ってやってきました。ただ昨今、やっと少しだけ歯科の材料学的なことが変化してきました。例えば私が卒業した1981年ですが、その当時、いわゆるボンディングという概念がかなり固まってきまして、光重合レジンがちょうど出始めの頃でしたが、もう充分この光重合レジンとボンディングシステムがあればどんな処置でもできると言われていました。でも実戦の場に出て、臨床をやっているとそんなわけにはいかないですね。色々なトラブルがあります。でもそういうこともおそらく120年以上かかって、少しずつ様々な材料学的なことが進歩しましたので、色々なトリートメント・オプションが出てきたので、そういうことの所を今日お話できればと思います。特に窪田先生の方から、リクエストいただきましたのがラミネートベニアです。中でもお話しするのですが、パスカル・マニエ。最初に見たのは5年位前のシカゴで行われたミッド・ウィンター補綴学会であり、そこで彼はデビューしました。まだ若く、確か30歳くらいだったと思いますがラミネートベニアのケースをたくさん出していました。その後ヨーロッパへ行ってもアメリカの学会へ行っても、彼のリサーチは今、世界を席巻していると思います。そういうことも含めまして、ラミネートベニアというある意味、おもしろい素材、実は20年位前から日本でもやってらっしゃる先生はいらっしゃいました。ただもっとボンディングに対するシステムが変わってきましたので、非常に損傷の少ない修復治療に持ち込むことができるということについてもお話したいと思います。今回のテーマとしましては前歯審美補綴の成功要件ということでお話させてもらいます。

我々が審美的な要件というものをどう定義するかということになりますが、あくまでも審美的な要件ですので、コスメティックではないですね。我々のできる審美は「破壊されたところを元あった状況に戻してあげる。」ことです。その元あった状況にあったもの、我々が扱う破壊されたものは、一番は硬組織ですよね。その次は軟組織があります。それを元に戻すには戻すなりの戻し方があります。それはすでに百年くらい前に完成されているのですね。ほぼ完璧な論文が出ているのが5〜60年くらい前です。それは総義歯学です。総義歯についての基本的な基準を頭の中に入れさえすれば、顔面に対する歯の位置、それをどういうポジショニングを決めるかということがすぐに分かるようになります。ですから我々のやっている総義歯学というのは審美修復治療の最前線であったわけですし、今もあり続けています。その要件ですが、特に顔面に対して基準線を設けてその基準線に対して何が大事かというと上顎の中切歯の位置です。上顎の中切歯の位置決めさえできればそこから咬合平面を類推する、もしくは作製することもできます。そして今度はバーティカル・ディメンジョン・オブ・ハイトつまり咬合高径をしっかりと決めてあげれば、その方の顎顔面の咬合というものが成立するわけですよね。つまり大事なことは顔面の様々な基準線を設けておいて、それに対して上顎中切歯の位置さえ決めればいいということですね。これがけっこう難しいのですけれども。今度は垂直的な基準ですが、我々の生体で左右対称の人間はありえないそうです。また左右対称であると見たときになんとなく違和感があるそうですね。ですから左右対称ではないのですが、一応の基準線を設けて、そして中切歯の位置決めをするのですね。ここらへのことはすべて総義歯学からきています。陶歯で作った義歯に対する完成された論文は、3〜40年前にできあがっていますね。それを見ると審美的な状況を考えることのすべてがそこに入っています。我々の歯科が求める審美はどこから来るのかということを知るためにもう一回総義歯学を紐解いてもいいのではないかと考えます。

今度は患者さんの顔面から考える中切歯の位置だけではなく、動的なものですね、Smile Line 笑ったときにどうなのか?Occlusal Planeの問題、それからIncisal edge locationが重要です。そしてFacial midlineこういうことはすべてIncisal edge locationを考えるときに役に立つのですが、次にGingival level。要は笑ったときに歯肉のラインは見えてはいけない。見えてはいけないのですが、それが揃った状況を作る。どういうことかと言いますと、骨の状況ができて初めて歯肉の状況はできます。ですから歯肉の状況を変えたければ、そのファンデーションである骨を触ってあげれば歯肉は変わります。骨があって歯肉があってその上には何があるかというと軟組織があります。その軟組織は頬粘膜であり口唇であるわけですね。その軟組織を支えているのが歯であり、歯肉であり歯槽骨であります。つまり顔面の表情というのは歯とその周囲組織で支えられていると言っても過言ではない。Gingival Levelが揃っているということは、そのFoundationが揃っているということ、つまり顔面の軟組織の状況が整うということになります。

じゃあ、歯肉の審美的な構成要素を考えると、歯頚線が対称であるとか、臨床的歯冠長の見え方はどうであるとか、歯肉のスキャロップ形態、歯肉の見え方であるとか、そういうことも非常に重要な審美的なファクターになります。簡単に言うと、総義歯の歯肉形成ですよね。

そういうことを踏まえて、実際の患者さんの状況を見ていきます。この患者さんは矯正治療の既往歴があります。有名な歯科の雑誌社に勤めていた方なのですけれども、とりあえず矯正治療はもう受けたくない、一番の主訴は2|の着色であり、もうひとつの特徴は、軽く笑ったときに下口唇が必ず歪むことです。この歪みが表情筋の問題から来ているかというとそうではない。笑ったときの下口唇のアーチを司り、コントロールするのは上顎の歯の配列です。1|1に翼状捻転があり、なおかつ2|が捻転していてやや舌側転位していますが、おそらく矯正後にリラップスしたのでしょう。そういう状況がずっと続いていたので、左側に比べるとリップサポートがうまくとらない。これは下顎の歯列の問題にもなってきます。ですからおそらく笑ったときに顔が歪んだようなイメージを受けます。我々のスマイルライン、つまり笑ったときの下口唇(上口唇は上に上がるだけであまり変化しない)は、上顎中切歯と犬歯のこの形に相応してくる。

これは最終的な処置が終わったところですが、ここまで持ってくるには何をするかということですね。その中で、今我々の使えるツールと言いますと、今までは削りました。削って形を変えたのですが、削らずに形を変えることもできるのですね。こちらに書いてありますのは、Bonded“A”Restoration、つまり何かをくっつけた修復治療です。ですから削るのか、Reductionするのか?それともAdd onするのか?何十年前から論争のあるのは、歯は削ってはいけない。そのとおりです。歯牙硬組織というのはいったん削ってしまうと、あるいは破壊されてしまうと、それを再生することは一切できません。再生医療の方でも、そういうことに取り組むので受けれども、まず無理です。不可能なのですね。それで例えば第二象牙質ができて、添加していくことを再生と捉えれば、ある意味でそうかもしれません。でも硬組織は削ってしまえば、それを元に戻すことはできません。だから削らないほうがいい。それはそのとおりです。そのような論争はずっとあったのですが、でも削らなければいけない場合だってあるのです。ですからReductionするのか、くっつけるのか、それを簡単に言えば仮の歯、Provisional restorative stageで作ってあげる。そしてそこで色々な試行錯誤して、できあがったものをうまく患者さんが受け入れてくれるのであれば、最終的な修復治療に持っていく。足したり引いたりしながらそういう計画を立てます。この患者さんの場合何を考えなければいけないか?治療の順序立てですね。初診時はこういう状態です。まずやらなくてはいけないのは変色歯です。変色歯ですから選択肢はやはりあるのです。この歯に対して歯の硬組織がしっかりと残存していてくれれば、旧充填物のコンポジットレジンをやり直して、漂白をしてあげておいて、ラミネートベニアを単に貼り付ければすむことです。ただこの方の場合、象牙質まで進んでいる二次カリエスがありましたので、それはなかなかできない。じゃあ削りましょう。プロビジョナルレストレーションを作りましょう。じゃあ、後の歯はどうするのでしょうか?計画を立てます。この中切歯をいきなり削ることはなかなかできません。それでは形態修正の範囲でできないだろうか?形態修正を行うにあたって、左右対称でない部分はどうしようかと考えます。そのときに1|にちょっと何かを足してやろうかと考えます。21|の唇側のクラウンカントュアは整いますが、それに対して|2はどうするか?削るのは簡単ですが、せっかく舌側転位してくれているわけですから(転位の度合いによりますが)、メインテナンスがきちんとできる範囲なら何かくっつければいいのではないかというようなことを考えます。まずやりましたのは、2|の根管治療を行った後、変性した象牙質を除去し、コンポジットレジンのダブルコアを装着して、Gingival levelを整えます。

ちょっと違うお話になるのですけれども、今ボンディングの世界では象牙質に対して樹脂含浸層ということが盛んに言われています。エナメル質に対するアプローチと象牙質に対するアプローチは全然違います。セメント質に対するアプローチは通常しません。ですので、我々が行うのは、エナメル質または象牙質にボンディング剤を塗布して、それをうまく接着させるということです。我々のやっている接着というのは、拡大してみると接着ではなく、アンカリング・イフェクトを利用した単なる篏合にすぎません。つまり微小なミクロ構造の中にレジンを流し込んで、それをタグとして、固定源としてくっついているように見せています。本来の接着というのは、界面が化学的に結合することですから。でも紙と紙が糊でくっつくこととボンディング剤の接着様式は同じです。紙の微小なミクロ構造の中に、糊の(ご飯粒の)構造が入り込んで、紙と紙をくっつける。我々のやっている接着はそういうものなのです。その接着の中で、エナメル質に対する接着と象牙質に対する接着は分けて考える必要があると提唱したのが、昭和大学の伊藤和雄先生です。今まではトータルエッチングと言いまして、エナメル質も象牙質もまとめて35%〜37%の燐酸でエッチングしてしまう、つまり脱灰してしまう。脱灰するとコラーゲンファイバーまで痛んでしまいます。コラーゲンファイバーが痛むと接着力が非常に低下してしまいます。このような基礎研究を伊藤和雄先生は行いました。故にエナメル質に対するエッチングと象牙質に対するエッチングは変える必要があるとし、エナメル質に対しては、通常の燐酸でのエッチングをしますが、象牙質に対してはいわゆるコンディショニング、つまりスメアレイヤーを除去して表面性状をきれいにする。そしてわずかに脱灰させる、でもコラーゲンファイバーは破壊しない、そういう状態をつくるためにEDTA(PH7.4)でデンティン表面を処理するわけです。次にプライミングという処理をします。これは35%グリセルモノメタクリエート(GM)水溶液というものを塗るのですが、要は溶媒のようなもので、象牙細管をシールドしてしまいます。生きている歯の象牙細管は必ず水分が遡上してきます。そして水分がある限り接着というメカニズムは働きません。本来の接着は何千倍もの強拡大で見たとき、わずかな水分がなければ接着できないのですが、我々の行う接着では水分は邪魔になります。ですからこの35%グリセルモノメタクリエート(GM)水溶液で水分をブロックして、その上にボンディング剤を塗布することにより、伊藤先生は、象牙質のエナメライゼーション(造語ですが)、エナメル質化してその上にコンポジットレジンを盛ることを提唱されています。なぜそんな面倒なことを行う理由は、コントラクションギャップ(界面の隙間)がある重合システムを採用すると必ず問題を起こすからです。生活歯の傷みがでます。それをなくすためのシステムを伊藤先生が開発したのです。このシステムを3~4年前に聞きまして、最初は疑っていたのですが、実際に臨床の場で使うようになって、離せなくなりました。少し難しいようなコンポジットレジン充填を実体顕微鏡で20倍に拡大して、ボンディングされた界面を見ると、以前のものとぜんぜん違います。20倍程度ではギャップがないことがはっきりと分かるのです。それともうひとつ大きい長所は、痛み、つまり臨床的な不快症状がほとんどないことです。今私の臨床ではこのシステムなしにはコンポジットレジン充填は考えられません。特に象牙質に対しては。もちろん我々のスタディクラブでも、これを配布しまして使ってもらっています。マニアックな先生方にとってはどんなシステムでもかまいませんが、1日80人も診る人は、日常臨床で、本当にコンポジットレジン充填に時間をかけることはできません。でもそういう忙しい人こそがこのシステムをお使いになると、よりよい結果を残せます。

「だから先生、これは離せません。」そのような声をたくさん聞いていますので、これは本物であると感じています。まあ簡単に言うと、スメアレイヤーを象牙質から除去して、スメアプラグを除きます。次にプライミングすることによって、この象牙細管から上がってくる水をカットします。水の上昇を遮断します。そして今度はボンディング剤の浸透・拡散を抑制して、つまりくっつきを良くすることですね。そしてその上に、もっと丁寧にやろうとするならば、フロアブルな、今でしたらもっと流動性のいいコンポジットレジンがありますので、それを敷いてやって、その上に少し固めのものを敷いてやる。するとまずギャップができるということはありません。レジン充填で一番痛みが出るのは、象牙細管に対する刺激がひとつ、それとギャップです。ギャップがあるとその部分が物理的な空隙になりますので、ある人は空隙に生ずる気圧差が痛みを生むと言います。でも要は水が上がってきて、空隙に溜まって刺激になるということです。グリセルモノメタクリレートによるプライミングは水分上昇を抑制して、接着界面の重合阻害を阻止します。

伊藤先生の本が医歯薬から出ていますので、読んでもらうとよくわかると思います。

このようなシステムを臨床に取り入れてから2年になりますけれども、変わったことは、メタルのダウエルコアの必要性がなくなりました。それだけコンポジットレジンのダウエルコアによって、問題なく上部構造をそこに装着できるということですね。

このケースの場合、まずは何をするかと言うと、こうやって診断用ワックスアップを起こします。この患者さんの口腔内をどう処理していけば、前歯のアーチ、歯列弓を保全することができるか、歯列の連続性を保てるか?この切縁と唇面の連続性が保たれると、その上に乗る口唇の形をうまくすると変えることができる、もしくは変形を防ぐことができます。ワックスアップ後に透明レジンでフォーミングシェルを作ります。これを我々はクラウンシェルとかクラウン・フォームングシェルと呼んでいます。コンポジットレジンを盛った上からフォーミングシェルを圧接すれば、簡単にその形状を変えることができます。ですからチェアタイムを非常に短くすることができます。我々は最終的に何を患者さんに提供するかと言うと、チェアタイムを提供するのです。自分のチェアタイムに対して、患者さんにどれだけの診療費を払っていただくか、それはもうチェアタイムの大小にかかってくるわけです。もちろん技術料という方もいらっしゃいますし、材料だと言う方もいます。でも極論を言いますと我々はチェアタイムを売っているわけです。そして買ってもらっているわけです。あまり言い方は良くないですが。ですからこういうことを考えれば非常にコンポジットレジン充填が楽になります。チェアタイムが圧倒的に少なくなります。これを自分で盛っている場合は大変です。

左側にはファイナルレストレーションが仮着されていますけれども、これをフォームングシェルでビルドアップすると右側の状態になります。もちろん1|の遠心は翼状捻転していますから歯列を整えるために、少しエナメル質の範囲で削り、形態修正しています。

マテリアル・セレクションですけれども、材料の進歩ということでお話させていただくと、おそらくメタルはどんどんなくなってくと思われます。またメタルは貴重なものですから、なくさなくてはならないと思われます。ゴールドだとか白金だとかパラジウムもそうかもしれません。一番怖いのはアレルギーです。イオン化傾向の高い金属は必ずアレルギー性疾患を起こします。もちろんタンパク質もアレルゲンとなりますが。それよりもメタルフリーの一番臨床的な効果として大きいのは、オールセラミックスクラウンを使うことにより得られる審美的効果です。アメリカなどでは歯科技工士という制度がありません。だから誰でも手を揚げて、私は歯科技工士であると宣言すれば、その日から技工士になれます。つくることができさえすれば。でもその人たちが一番困るのが、porcelainfused-to-metal crownいわゆるセラモメタルクラウンです。これにはテクニックが必要です。メタルの厚みの上に、陶材をビルドアップしていって天然歯のような色調を出すことが一番むつかしいのです。でも誰がやっても成功しやすいのが、オールセラミッククラウンです。ですから今かなりの割合で、オールセラミッククラウンにシフトしてきています。ブリッジも、オールセラミックス化してきています。それはベースをジルコニアにする方法です。まだ日本では認可されていませんけれども。で、ファイナル・リザルトがこういう状況になります。2|がオールセラミッククラウンです。これはプロセラというシステムを用います。1|遠心部はコンポジットレジンを足しただけ。1|遠心唇面はエナメル質の範囲で削っただけ。|2はレジンシェルでコンポジットレジンを足しただけなのですね。ですから何も削っていません。もちろんコンポジットレジンですから必ず変色します。だから所詮コンポジットレジンですけれども、されどコンポジットレジンなのですね。変色してポリッシュする、研磨することによって、その色をもう一度ある程度まで元へ戻すことができます。でもそれが経年的に3~4年たったらどうかというとそれはクエスチョンです。私のコンポジットレジン充填の一番長いケースで13年というのがあるのですが、(一番長いのは18年だが、継続的な来院ケースでは)やはり変色してきます。それをポリッシュするのですが、もうベースの色が変わってきますよね。でも二次カリエスがあるかというと無いです。それはもちろん昔のボンディングシステムを使っていますが、一応問題なく経過はしています。ただやはりレジンというのは吸水します。吸水する限りは必ず変色というのは避けられません。でも簡単にいくのです。なぜこんなショートカットなことをするのかというと、この子は仙台から飛行機で飛んでくるのですね。一回来院すると次に3日後に来てよとか、一週間後に来てよとか言えません。一回来たときにやれることをやっておいて、山形県に帰ってもらって、山形県からまた一ヵ月後に来院して仕事をして帰っていく。そういうようなシステムですから、コンポジットレジン充填の部分の色が変わったら、今度はそれを剥がして、そこをラミネートに変えましょう。そういう話をしています。

左図は、左側がメタルダウエルコア、右側がコンポジットレジンダウエルコアで、光の透過像がこれだけ違います。上側は圧排コードを歯肉溝に挿入したところですが、黒い色を歯肉が透過します。これをGray ahadowと呼びます。これを嫌がる人がいます。ですから光透過性の良い素材を使えればベストな選択です。デンティンボンディングシステムのお陰で、現在こういう素材を使えるようになりました。これはプロビジョナルレストレーションで1|にはレジンを盛っていないのですが、プロビジョナルレストレーション装着して笑っていただいたときに、ちょっと変化します。もちろん口唇の形はまだ変わっていませんよ。患者さんが山形に帰って、母親に「最近、あんた笑うと顔が歪まなくなったね」と言われました。ああなるほど。唇面のレベルをある程度整えるだけでそれは変わってくることがわかります。まだ完全ではないですよ。右図は2年後のリコール時の写真です。|2のようなコンポジットレジンベニアレストレーション、これが盛んに行われるところがあります。それはミス○○コンテストのときに、一週間から10日くらいで歯列を皆変えないとだめだと。叢生があるから。そんなとき、唇面にコンポジットレジンを貼り付けます。それに特化した歯科医がアメリカにはあります。一番有名なのはハワイと言っていましたね。右図がファイナル・リザルトです。次は初診時とファイナル・リザルトです。2|だけが削って補綴していますが、後は足しているだけです。初診時に比べると、元々美しい方ですが、かなり口唇が改善されています。

さて本題のラミネートベニアです。くっつけるだけですめばいいのですが、19〜20歳くらいのこの患者さんの場合、バイクの事故で転んで、歯を破折してしまった。色々な選択肢があります。コンポジットレジン。それでもかまいません。ただ1|の遠心隅角部をコンポジットレジンで修復して、|1と変わらない状況を作ろうと思うと、おそらく6時間くらいかかるでしょう。ベースを作っておいて、カットバックを入れて、さらにその上に透明レジンを入れて、さらに色調を見て、その色調がだめならもう一回やり変えですから、それにステインが使えません。ですから実はあるコンポジットレジンだけで色調を変えていくというのは至難の業なのですね。隣に歯が在って、それに合わせて修復するというのが一番むつかしいです。

患者さんと相談して、まず考えましたのがアディショナル・ラミネートベニアです。なにしろこの症例はエナメル質だけでなく象牙質まで破壊されていますので、それに同様に接着するものを作ってみようとしました。つまりスモール・ピース・オブ・ポーセレンですね。もちろんエナメル・ボンディングとデンティン・ボンディングが必要になります。でもこの結果は分かっています。左図はこの方法で修復した結果ですが、どうしても境界がはっきりと判ります。患者さんに言うと、先生ありがとうございますと云うのですが、結果に納得できないわけですね。この状態でジャンクションがどうしてもとれません。そして経年的にジャンクションから必ず変色が起こります。じゃあエナメル質を一層だけ落として、上にベニアを貼り付けましょう。幸いなことに|1のほうが1|よりわずかに唇側に出ているのですね。ですから1|唇面の一層のエナメル質を除去するだけで、すむのですね。我々モンゴロイド系の場合、欧米人と違いまして、歯頚部のエナメル質の厚みが違います。ですから0.5mm削ってしまうとまずなくなるということが多いですね。ですからこの部分の形成量は0.3mmくらいがベストなのです。では0.3mmでテクニシャンに仕事しろと言って、できる人はあまりいません。どうしても0.5mmくらいのリダクションが必要になるのですね。でも幸いなことに、これは唇側に転位していますから、表層を一層削るだけですむわけです。もちろんこのポーセレンの接着した部分も一緒に形成します。シェードテイキングをします。2|は失活していますが、破折線があっても割れていないのでこの状態でいいだろうと判断しました。色が変わってきたら、漂白しようねという話しをしています。もちろんコンポジットレジンできっちりと詰めていますけれども。初診時の状態から隅角部にスモール・ピース・オブ・ポーセレンを貼り付けて、最終的にベニアをこの上にくっつけます。まあ、こういう状態でしたら、患者さんは非常に大喜びです。

左下Eが永久歯の先天的欠損のために残っていまして、動揺しています。問題が起きたら抜歯する説明を行い、患者さんに「君はまだ学生だからお金を貯めて来い」「お金貯めてきたら、ここにインプラント1本プレースメントして、そこに上部構造体つくろうね」という話しをしてあります」我々のできる治療法の中で、このラミネートベニアという方法は、歯に対して侵襲が一番少なくて、そしてエナメル質だけのボンディングで済んで、そして尚且つカリエスに対する抵抗性が一番強いのですね。そしてもっとありがたいのは作るのが難しいのですけれども、色を合わせるのがそんなにむつかしくない。ベースの色をそのまま利用することができる。天然歯を削って、修復材料を入れて、天然歯よりきれいにするということは、私の臨床でもそんなことあったかなと思うのですけれども、天然歯を削ってベニアを貼り付けて前よりもきれいに見えるということをよく経験します。ですから審美的なツールとしては非常にいいですよね。

では今度は同じような学生のケースを見てみましょう。カリエスのない正中離開の症例です。

「ぼくはちょっと映画の通行人をやるので、前歯が気になる。」

と言うので、

「通行人ならしゃべりもしないし、通るだけだから判らないだろう。」と言うのですが、「気になる。」と言うのですね。まあ確かに気になると思います。じゃあどうするか。近心にコンポジットを足してやるプランは、あまりに歯の形が変わります。削って、または近心にアディショナルのベニアを足すか?それもやはり論外です。簡単に考えますと、この空隙を詰めてしまえ。ブラックスペース プロブレムが、昨今まで話題に上りました。

「私の歯と歯の間に隙間がある。この黒い隙間を埋めてくれ。」

埋めるには、色々な方法があります。その埋める材料は歯間乳頭であるべきなのですよね。でもそれで埋まらない場合は補綴的に材料で埋めてやる必要があります。日本で一番有名なテクニシャンであるMr.桑田とシルダースタインのゴールデンコンビがいますが、1960年代、色々な学会に行くと必ず桑田先生に誰か有名人が挨拶に来ます。それほどこの方は日本で有名な方ですよね。Mr.桑田とシルダースタインのコンビはProximal long contactというコンセプトを提唱しています。何かと言うと、要は長いコンタクトを作る。つまり簡単に言うと、ブラックスペースをうまく修復治療で埋めることができるということです。あと類似のテクニックとして昨今ではTissue supporting crown contour、ハーフポンティック・テクニックなど様々なことが言われています。

まずベーシックデータを採取してからこの症例の問題点を拾い上げます。それはそんなに難しいことではないですよね。正中だけですから。

順序立てた治療計画の立案をします。

必ず考えなければならないのは、最初に歯と歯肉と歯槽骨の三者の関係です。それから治療部位、治療期間、治療順序、修復治療の設計、後は様々です。そのようなことを考えて、第一選択枝はとりあえず矯正で詰めてしまえ。では、フルブラケットで矯正するのかというと、そうじゃないですね。この犬歯から犬歯の間を詰めてしまって、そしてスペースをどこかに作ろう。もちろん歯冠径とアーチ(歯槽基底弓)の長さを計測して、arch length discrepancyを診ます。診た状況により、なにも一番むつかしい正中でスペースを修復的に詰めるのではなくて、スペースを一箇所に集めていってそこで詰めればいいじゃないかと立案します。全顎敵な矯正治療をしていませんから、必ずスペースはどこかに出来ますね。ここで説明しているのは、このような正中離開で青年期を終わろうとしているときに、この人が口唇を閉じてものを飲み込もうとすると、口腔内を陰圧にしなければ、絶対ものを飲み込むことはできません。陰圧にしようと思った場合、隙間があればできないのですね。この隙間を埋めるために舌を隙間に突っ込みます。口唇の隙間に当たる部分も変形し、リップ・サポートも変化します。必ず我々の生体は、歯列に欠損があると、軟組織がその欠損を埋めなければ、食事をすることができないし、喋ることができません。ですから我々のやっていることは、単に歯を並べて、隙間を埋めるということではありません。顔面の状況をすべて変えてやることができます。つまり、軟組織の変化を止めてやる必要があります。でもこの人の場合、舌を隙間に突っ込む習癖、tongue thrustが100%起きています。そうしなければものが食べられませんし、生活できないわけですから。tongue thrustの有無をよく観察してその習癖を除去しなければなりません。除去しないと必ず後戻りします。実はこの人は後戻りしたのです。矯正治療が終わりました。スペースクロージングしました。もちろんbodilyには動かしません。傾斜移動、つまりtippingさせているだけです。ですから歯根の状況はあまり初診と変わっておらず、単に歯冠部がくっついているだけです。でも32|23の間にスペースを持ってきました。

上條雍彦(やすひこ)先生や藤田恒太郎先生の成書にかかれている、通常の日本人の天然歯の幅に比較したとき、この犬歯の幅は小さいく、尚且つ両側切歯のサイズも小さいのです。ではこの隙間をどう詰めるか?コンポジットレジンを使ってもかまいません。やり直すのが面倒なら、ラミネートしてもいいでしょう。この場合、Additional Laminate Veneer Restoration を選びました。単にスモールピースのポーセレンを接着させるだけで、歯は削りません。

ですから、Easy bonding、エナメル質ですからね。それから

Not difficult to make、作るのはそんなに難しくありません。一番いいのはreductionしなくていいことです。歯を削るストレスがないのです。これはMock up trialと称しまして、要は側重レジンで仮のピースを作りまして、テストするわけです。この人の場合、犬歯の唇側のカントュアを膨らませるため、犬歯をすっかりカバーし、そして側切歯は遠心のスペースだけ埋めて2の形を作る、トライアルをしながら形態修正を行い、患者さんに見てもらいます。

「先生、もうちょっと気に入らないからここをもう少し削って‥」

「判ったよ。どう、これくらいで」

「うーん。これくらいだったらいいかな」

「じゃあ、これでいこうよ」

右図(左上、左側)は犬歯です。本当に付け爪みたいなものです。削らずに単にはりつけるだけ。その右は側切歯の遠心にくっつけるためのものです。

それをくっつけました。まず正面から見て、判る人はいないと思います。ただ側方から見るとどうしても界面が見えますが、なんとなく流れからいくと判りづらい感じがします。この犬歯は付け爪のような状況で完成です。

で、こういう状態ですね。うまく通行人ができたかどうか聞いていませんけれども。もちろん先ほど言いましたように、舌癖がありましたので、それは練習しなさいと言い、まだ保定装置を入れてあります。こういうようなおもしろい使い方ができるということですよね。

次はこのような患者さんです。21|2が失活歯です。|1は天然歯です。2|12にはラミネートベニア、1|にはセラモメタルクラウンが入っています。この状態で気に入らないから作り直してちょうだいといらっしゃいました。

「別にいいじゃない、これで」

と言うと、

「いや、色が‥」

男の子のくせに犬歯を漂白していて、漂白が好きみたいで、どうしても審美的に嫌だと言うのですね。文句言う割には、切縁を見て判るように、結構歯ぎしりしているのですね。ブラクサーとまでは言いませんが、咬合の問題を抱えたむつかしい症例です。じゃあ、まず外してしまいましょうと言いました。外すには外す理由があったのです。皆、中が二次カリエスでした。二次カリエスがなければ、このようなむつかしい症例は

「やめようよ」

と説得するのですが。ただ|1だけはラミネートベニアが貼り付けられているので、全周にエナメル質が残っています。残っていれば、それをひき剥がす必要はありませんよね。この場合、360度のベニア形成をするのですね。非常に面倒なのですが、少なくともすべてエナメル質を残しておいてあげれば、360度のラミネートベニアを装着してあげればすむことですね。非常に価値があります。一番これをやってありがたいのは、外してセメントを除去しても、まったく沁みないということですよね。エナメル質が全周に残るわけですから、歯髄刺激がなにもありません。もちろん欠損部にはコンポジットレジンを充填しなければなりません。それでもストレスはありません。21|2はしょうがないですから、二次カリエスを取りきって、再根管治療をすると、もうコンポジットレジンのダウエルコア、もしくはコンポジットレジンコアが必要になります。

コンポジットレジンダウエルコアの話をちょっとだけします。

私の臨床ではメタルダウエルコアはほとんどなくなっています。なぜなくすかというと、一番怖いのは歯根破折です。よく成書には、失活歯に対してダウエルコアを装着する目的として、残存歯質を保存すると書いてあるものがあるのですけれども、それは真っ赤な嘘です。あくまで歯冠部の歯質がないものに対して、修復治療を行う必要から、単に上部構造体をそこにつけるために便宜的に存在するものであって、けっして残存歯質や歯根部を守るものではありません。破壊する方向には働きますが。ですから硬いものはあまり良くないわけですね。どうせ硬いものなら、思い切り硬いジルコニアがいいと言った人がいるのですが、今クエスチョンです。じつは私もこういうコンポジットレジンダウエルコアをやる前には、どうしても前歯の審美的な条件を満たすために、ジルコニアコアを取り寄せて装着しました。装着して誰かに言われたことがあります。

「先生、根管治療に自身があるのですね」

「あるよ」

もし問題が起こったときに、再治療ができない。根尖三分の一位まで、通常通り形成したジルコニアポストを外すということは至難の業です。メタルの百倍くらいの時間がかかります。再治療のできない治療というのは良くないですね。100%の治療のできる人間なんて絶対にありえないと私は思っています。

コンポジットレジンダウエルコアの場合、面倒なことはありますよ。でも、外すことに関してはそんなにストレスはない。それと一番ありがたいのは割れるときは、コンポジットレジンダウエルコアだけが割れてくれるのですね。歯質を巻き添えにして割れることはあまりありません。ダウエルコアに関しては、かなり色々な方がリサーチをしています。結論を言えば、リサーチを見ても、咬合力の分布を見ても、コアは修復物を維持する機能だけしかなく、一切歯質を保存する方向に力は働きません。だから残存歯質の保存機能はないのですね。では、できるだけ残存歯質を保存させるための研究をしたのが、Libmanリブマン教授ですね。それともうひとつ追試をしたのがSorensenソレンセンですね。これは、もうナショナルコンセンサスを得ています。どういうことをするかというと、要はフィニッシュラインの部分の健全歯質の高さを保ちましょうということです。それをFerruleと言います。日本語では口金とでも言うのですかね。桶についている箍(タガ)のような効果があります。だから歯頚部から水平にスパっと切ったものよりも残存歯質をFerrule状に残したものの方が、破壊応力が少なくなるよということを実験的に実証しました。ただその実験が口腔内で行われたかというとそうでもないのですがね。けれども実験をやらないよりはましです。非常にFerrule effectは重要なコンセプトです。

まあ、こういう風な様々なリサーチがなされています。でも、そこまでメタルに拘る必要はないのではないかと思われます。USC、南カルフォルニア大学の十数年前のリサーチで、失活歯3000症例の追跡調査をしました。その結果恐ろしいほど歯牙の破折、歯根破折が起きています。歯根破折は抜歯する以外に手がありません。時々、成書にレジンで詰めて元へ戻している症例が出ていますが、そんなことありえません。本当に咬合力を支えるKey toothになる歯にそんなことをしてもとてももちません。骨がなくなるだけです。ですから歯根破折をした歯は即抜歯をしないと骨があっという間になくなります。3000症例をフォローアップした内の30%に歯根破折が認められました。それがアメリカのリサーチですが、モンゴロイド系の我々というのは、コーカソイドと違いまして、歯髄の形からして全然違います。だからコーカソイドでは、麻酔なしで削ることができ、通常モンゴロイド系で削ったら露髄している量を削っても、歯髄が露出しません。つまり抜髄が少ないのですね。アメリカに行って、エンドドンティストのところへいって見学していて、何でこれを抜髄するのか疑問に思うことがありますが、その理由は単にひとつだけ、患者さんが染みるから痛いと言うからです。日本だったら、我慢しろと言うのです。でも、向こうは

「沁みて痛い」

と言えば

「分かっている」

と言って抜髄します。それ以外には抜髄の理由はそれほどないですね。ですから向こうの方が、失活歯というのは少なかったですよ。それに比べて、日本は失活歯が圧倒的に多いですよね。ですから、我々が再治療できる条件で、歯質をできるだけ残す治療のダウエルコアを作らなければならないということです。じゃあ、そのダウエルコアというのはダウエルとコアですから、マテリアルがメタルであるならば、メタルダウエルコアです。コンポジットレジンであれば、コンポジットレジンダウエルコア。ですから私の選択肢としては、現在、コンポジットレジンダウエルコアを使っています。それが使える理由のひとつとしてデンティン・ボンディングシステムがあるからです。ダウエルコアの必要条件で一番大事なことというのは、歯質を残しましょうということです。360度歯質が残っていたらこんなものする必要はないですよね。もしくはペリオ的に言うと、3壁性のような資質の残存状況であれば、それもこんなものする必要がないですよね。でも歯冠部歯質がほとんどないのであれば、これをする必要がある。ではその時に、ダウエルは骨内の歯根長の二分の一以上なければ、物理的に上部構造体を保持できません。それとダウエル部の太さはできるだけ細くしなければ駄目ですね。ですから昔はやった目で見る根管治療といって、バカバカ拡大するのは、これは論外です。尚且つダウエルコアをつくるために根管を形成しすぎるのも、これは論外です。ですからそのうち、根充材がもっと良くなって、根充材がそのままボンディングシステムでボンディングできるようなものになってくれれば、ダウエルコアなんて必要なくなる時代がくるかもしれません。

本家の伊藤先生言わせると、下顎重合するものであって、尚且つ、直接法でダウエルコアを完成させないとデンティン・ボンディングシステムは完成しないと言うのですが、チェアタイムを淡色するために、このダイレクトメッソッドというのはほとんどやりません。インダイレクトメッソドをやります。つまり模型上でつくって、それを通法どおりの処理をして、セメンターションを接着性レジンセメントで行うというものです。

ですからこういう風に、通常通りのコアの印象をして、模型上でコンポジットレジンとグラスファイバーのポストを根管に入れます。その上にビルドアップしてそれを接着性レジンセメントでセメンターションします。

2|の歯冠の大部分はエナメル質が残っていますが、近心にだけ旧充填物とカリエスがあったので、充填します。

充填しなおしてやると、水をかけようがエアをかけようが染みません。削るのは大変ですが、360度エナメル質を残すということがこれほど楽なことかと思います。一番ストレスがあるのは、このように象牙質まで削ることです。

こういう状態です。プロビジョナルレストレーションを装着するとこうなります。後でまたお話しますが、|1は先にセメンテーションをしなければいけない理由がありますので、この部分だけ、先に360度のラミネートベニアクラウン、簡単に言えば昔言うところのポーセレンジャケットクラウンをつくってセメンテーションして色が落ち着くのを待ちます。待ってからその横の色を決めて、ファイナルに臨みます。もちろんプロビジョナルレストレーションで、しっかりと再評価をしてあげて、最終的なrestorative phaseは、じゃあマテリアルをなんでやるのか?もう簡単ですよね。オールセラミックスクラウンですよね。|1が落ちつくのを待って21|2を作るのですが、その際に問題になるのはやはり透過度です。黒いものをバックにして写真を撮影すると、どうしても1|と|1の透過度が変わってきます。この状態です。

じゃあ、最初にラミネートベニアの基本的なお話だけさせていただきます。ラミネートベニアプリパレーションですが、リダクションが、つまりエナメル質内の形成でなければラミネートベニアの意味がまったくありません。エナメル質に対しボンディングできるから価値がありますね。ですから一番注意しなければならないのは歯頚部の形成です。歯頚部は0.7mmではエナメル質がなくなってしまいます。じゃあ0.5mmはというとクエンチョン。ですから最初に必ずオリエンテーショングルーブというのを入れるのですね。そして唇面や軸面のオリエンテーショングルーブは、軸面が0.3mm。最初に出たバーの厚みは0.5mmです。ですからいくら削っても0.5mm以上削れません。けれども0.5mmのデプスを入れてしまうと、それをフラットにして仕上げをすると、0.7mm削れてしまいます。ですから最初のリダクションは、あの0.5mmのバーで0.3mmくらい削り、そして歯頚部中央と切縁にリダクショングルーブを入れておいて、そしてインサイザルの部分は最高でも1.5mmまでの切削に留めます。中には2mm削れる患者さんもいらっしゃいますが、この歯はもともと咬耗していますから、削れる量は1mmまでです。1~1.5mmまでの間と考えてください。そこまではエナメル質をリダクションしてもかまいません。また、しなければいけないのですね。昔、私も時々やりますが、咬合の問題で、非常にファセットの強い人、その歯に対して、ラミネートベニアを行うときに、舌側の歯質をどれだけ残すか、つまり唇側をどれだけ削るのか、言い換えれば、切縁を削るのか、削らないのか、その考え方は二通りあります。あまりシビアな場合は切縁を落とさないです。けれどもそうでない場合、通常のオクルージョンを営んでいる方で、歯ぎしりなの既往歴のない人だったら、こうやって切縁を落とします。それの方が理に適っています。それはまた後でお話します。リダクショングルーブを入れておいてそれを均していきます。ですから0.3mm入れるということは、どう均してもきれいな面をつくろうとしたら、0.4mm、それを越えることだってあります。歯頚部にはできるだけ注意を払う。それからもちろん隣在歯は削ってはいけませんから、最初の頃は必ず隣接面にストリップスを入れてください。隣在歯にバーが当たると、そこは必ずエナメル質が削れていますから、ポリッシュしない限り100%カリエスになりますからね。通常のラミネートベニアの場合は、歯肉縁上か歯肉縁ぎりぎりで形成します。この方の場合は失活歯ですので、最初は漂白でごまかしていました。2~3回はそれでごまかされるのですけれども、4〜5年経過して、また変色してくると、

「先生いいかげんにしてよ」

と言われるので、

「じゃあ、しょうがないから表層だけラミネートベニアを貼ろうよ」

という話をします。こういう健全歯の場合は、歯質の色は変化していませんから、これは歯肉縁上か歯肉縁ぎりぎりでかまいません。でももちろん形成するときには、必ずリトラクションコードが必要ですよ。縁上で形成しようが縁下で形成しようと必ず歯肉圧拝糸というのは必要です。この場合は歯肉縁よりわずかに下にフィニッシュラインを設定する必要がありますので、圧拝コードを入れています。

それから通常にリダクションに入っています。

切縁の形成については、様々な言われ方をしてきました。この舌側の部分はシャンファー形成して、ちょっとベベルをつけましょうとかね。けれども冒頭に申し上げたようにパスカル・マニエとう方のリサーチなどを見ると、Butt joint-incisal以外に強度を保てる形はありません。

だから削りっぱなしです。スパッと切ってしまったら、後はエッジを滑らかにすればいい。

これはエンドカッティングバーでフィニッシュラインを整えているところです。(1時間16分40秒)最終的にこのようなホワイトポイントで、仕上げます。ちょっと前に出たホワイトポイントと径が変わっているのが判りますか。これはダイヤモンドドレッサーでフィニッシュラインに合うように形状を削るのですね。このホワイトポイントは非常に便利なもので形状を変えることができますから、いつでもカスタムメイドのベニア形成ができます。愛用しています。こういう単冠のベニア形成で一番気をつけなければいけないのは、近心側の隣在歯との移行部ですね。この移行部をできるだけ舌側に入れておかないとこの部分にジャンクションが見えてしまいます。ラミネートベニアと歯質との境目が見えてしまう。特に変色歯では審美的に非常に良くないですね。遠心だったら覗き込まないと判らないからかまいません。でも近心側はできるだけこの部分のリダクションを行ってくださいね。そしてもちろんフィニッシュラインだけでなく唇側と隅角部、すべてエッジがあっては必ずそこに応力が集中して割れてしまいます。ラミネートベニアというのは0.5mm、薄いところで0.4mm、0.3mmのときもあります。そういう薄いものを装着するわけですからね、ちょっとでも角張ったところがあるとパリッと割れてしまいます。ですから、そういう所がないようにしっかりと均します。ベニア形成は象牙質を削らないし、歯の片側だけしか削らないから簡単かというと、そうじゃないですね。実は結構むつかしいのです。

ときもあります。そういう薄いものを装着するわけですからね、ちょっとでも角張ったところがあるとパリッと割れてしまいます。ですから、そういう所がないようにしっかりと均等にします。ベニア形成は象牙質を削らないし、歯の片側だけしか削らないから簡単かというと、そうじゃないですね。実は結構むつかしいのです。

先ほども触れましたが、非常に有名なパスカル・マニエのリサーチで、天然歯でまったく侵襲のない歯に歪ゲージをつけ、それとベニアの形成をしてベニアを貼り付けたところに歪ゲージをつけて、負荷をかけたときに、どの部分に負荷がかかり、どの部分が割れるか割れないか、そういう様々な実験をしています。おもしろいのは、次の実験です。

何もしない歯をベースラインにして、両側に3級窩洞を掘り何も充填しない歯、両側に3級窩洞を掘りレジン充填した歯、根管治療を行い、両側レジン充填で髄室を開拡した状態の歯、両側レジン充填で根管充填し開拡部も充填した歯、それぞれの負荷を加えたときの歪を計測したところ、ほとんど有意差はありませんでした。これはどういう意味なのかというと、歯のファンデーションがしっかり残っている場合で、そして充填処置がしっかり為されていれば、加重に対して歯は象牙質とエナメル質がある程度の範囲まで残っていれば耐えるということを示しています。

パスカル・マニエは「象牙質とエナメル質はある程度まで歪む、または曲がる。しかしどちらかがなくなると歯は非常に弱くなる」と書いています。

今、クインテッセンスからうちの若い先生が訳したものが出ていますから、それを読んでいただければよろしいかと思います。

それともうひとつおもしろいのは、アンドレーゼンという方の、羊の切歯を破折させる実験です。

ラミネートベニア修復した後に、再び切歯が破折するまで加重を加えて、その強度を調べたものです。

結果は無傷な切歯とラミネートベニア修復した歯の、破砕にいたる力の大きさに変わりはなかったという結果が出ています。

つまり一層落とされたところにラミネートベニアをボンディングしたものと天然歯の強度に変わりはないということです。言い換えると一旦貼り付けたラミネートベニアには、それほど強度があるということですね。これは非常におもしろいディスカスです。

同じように発展させた研究ですが、結論を申し上げると、フィニッシュラインを各種設定して力をかけた結果を見るわけです。例えば何も削っていないもの、唇側と切縁のみを被覆したもの、舌側から唇側にかけて削ってラミネートベニアを貼り付けたもの等、様々にフィニッシュラインを設定し、同じように力をかけたところ、フィニッシュラインの設定位置が及ぼす影響はどうかというと、舌面中央に応力集中が認められるので、この舌面中央部もしくはその下に、つまり基底結節部にフィニッシュラインを設定する、被るような形態にした場合、そこに応力が集中してしまって割れやすくなります。だから彼は結論として、できるだけバッド・ジョイントで、できるだけ舌面中央から少し上方へ、応力が集中しない場所にフィニッシュラインを設定してやれば問題ないと主張しました。どうも我々はここにはベベルが欲しいだの、シャンファー形成しておいたほうが絶対いいのにとか思うのですが実験結果を見ると明らかに違います。ですからあくまでもラミネートと歯質のジョイントはバッド・ジョイントです。けれども唇側のマージンはラウンデッド・ショルダーもしくはバッド・ジョイントなんですけれども、あまり急角度に、つまり凸凹したり出っ張りのない形成をします。

これはさっきお見せしたケースですが、変色しているのでまずブリーチングします。ブリーチングしますが、それほど変化しません。コンポジットレジンを詰めているのですが、この患者さんとは長い付き合いで、1〜2年以上経過後に「駄目です。また色が変わりました。」という話になります。これだけ切縁にファセットがあるのですが、経年的に診て変化はない。もちろん切縁にはより以上のエナメル質があったわけですから、形成量を考えなければならない。それでこれは0.5mmの深さのバーです。これかもしくは先端にホイールあるバーで0.5mmか0.7mmのメジャーリングのあるバーが販売されているのですけれども、それはなんでもいいと思います。パスカル・マニエなんかの話を聞きますと、これ使っちゃ駄目だと言います。形成量というものはあくまでこの歯列の連続性のカントュアから決めるものだから、診断用ワックスアップをするなりして、唇面の形状がしっかりと決まってから、そこから計測するものであって、ここから作るものじゃないと。これはたまたまうまくカントュアが連続性のあるものですから、かまわないケースです。ですから0.3~0.5mmが限界ですから、0.3mm以上最初のオリエンテーショングルーブに絶対入れないでください。必ず削りすぎますから。支台歯形成の講習会でよくお話するのですけれども、必ずパイロットグルーブの形成量は自分の求める量の半分にしてねと言います。半分にしても後で削りなおしたり、ポリッシングしたりしたら必ず残りの歯質は飛ばしてしまうから。ですからラミネートベニアは特にそうです。何回もしつこく言いますが、エナメル質のなくなったラミネートベニアはなんの意味もなしません。いくらボンディングシステムがあってもそれは意味がないです。ですから、必ずエナメル質が残っているということが最低の条件です。だからエナメル質を削除しないように。一番むつかしいのはこの歯頚部のエナメル質ですね。これが一番薄いわけです。切縁部にいきましたら0.7mmくらい削っても、エナメル質は残存していると言われます。でもそれはあくまで患者さんの歯によります。ケース・バイ・ケースです。削除量としては、軸面が最高に削った場合で、0.5~0.7mm、切縁は1.0~1.5mmです。これが基本的歯質削除量です。歯頚部の部分が0~0.5mmと書いてありますけれども、これは限界です。これは最高削ったときの値ですからね。これは私と伊藤先生とか土屋先生とか医歯薬から出ている「ボンディングレストレーション」から抜粋していますけれども、そして唇側の切縁にむかっては0.7mmです。そして切縁は天然歯でまったく咬耗のない歯であった場合に1.5mm。咬耗があった場合はそれに応じて変えてください。もっとシビアに切縁の色が欲しい場合は2mm削る場合もあります。わずかしかエナメル質を残さないように。そういう状況もありますけれど、それはケース・バイ・ケースです。これが基本的な形成量です。

コンタクトポイントですけれども、コンタクトポイントは通常崩しません。くっつけたままで形成するのですが、その頬舌のコンタクトエリアが広い場合は少し多めに削りこんでもかまいません。狭いコンタクトエリアの場合は、わずかな形成で止めてください。止めてやるのですけれど、歯頚部は削り込まないと必ず正面から見えてしまいます。だからラミネートベニアの支台歯形成するときには、必ず模型で削ってください。模型で削って、そしてその状況を見て、そしてうまくいっているかどうかを確認してから患者さんを削ってくださいね。いきなり患者さんでブンブン削ってしまって、ああ飛ばしてしまったというのでは、別にかまいませんが、それではいい仕事はできません。

最終的な装着方向はどちらからでもかまいません。どこからでもいいのですが、少なくともpath-wayはhorizontal insertion Pathを目標とします。自分のケースのなかでも、咬合面側からシーティングしなければいけないケースもありますし、真っ直ぐ前からシーティングするケースもあります。ですから我々の頭の中ではいつでも、フルベニアクラウンやフルカバリッジクラウンの形成のように上から装着する習慣がありますから、それを前から装着する場合、なんとなく分かりづらいものがあるかも知れません。ですからそれを理解するには模型を削って、そこにプロビジョナルクラウンを作って、やってみてください。一回やるだけですぐに分かります。着脱方向をよく考えるということですね。

フィニッシュラインは通常の歯であれば、よほどの変色歯でない限り、歯肉縁上でかまいません。判りません。0.5mmのポーセレンを焼成するわけですから、それはもう透明なガラスです。ですから下地をそのまま拾ってきます。けれどもどこでやろうとも必ず圧拝コードを入れます。圧拝コードを入れないと、歯肉の辺縁つまり遊離歯肉の先が判りませんから。ですからその落ち着く先に合わせて、歯肉縁下、縁上を決めるわけですから。特に歯肉縁下に入れる場合は圧拝コードなしではできません。そして最終的な仕上げではエッジは絶対残してはいけません。ですから切縁と唇面の移行部などエッジはどんどん丸めていきます。できれば拡大鏡を使ってスムーズな面にしてください。別にいつでも実体顕微鏡を使えとは言いませんが。少なくとも2〜3倍の拡大鏡を使ってください。もうアメリカの歯科大学では、学生のころから2〜3.5倍の光学的な両眼ルーペを使っています。よく虫眼鏡みたいなルーペを使っている人がいますが、あれは眼科の先生に言わせると単なる虫眼鏡、もっと言い換えると老眼鏡、ですからあれで拡大すればするほどどんどん度が進むと言いますね。でも光学系のものでしたら、しっかりとした拡大のためのレンズ系を持っていますので、眼に負担がかからない。だから老眼が進まない。そんなことより我々のする仕事というのは非常に細かい仕事がありますので、後でも触れますが、セメンテーションした後のレジンの除去は至難の業です。大変です。それをやろうとすると拡大しないと本当に判りません。見えませんから。ですから、むこうでは当たり前のように臨床では、少なくとも3倍前後のルーペを使って日常臨床をやっています。もう日本の大学でも確か愛知学院大学では、学生の頃からルーペを使った診療をさせているそうです。またそうしないと我々の仕事のクウォリティーは上がりません。実はこういうお話をして一番喜ぶのが、もう老眼が始まってきた年代の先生かもしくは老眼になっている方です。一回あれをやると離せないと言います。それはそのとおりです。自分の目ですからね。目が見えないと仕事ができません。ですから最終的な仕上がりは必ず拡大してチェックします。そうしないと僅かなエッジがあるだけで、本当にそこに力が集中して割れてしまいますからね。

ラミネートベニアで私だけかもしれませんが、一番ストレスになるのがプロビジョナルレストレーションです。形成したまま裸で返すわけにはいきません。ですからこちらに書いてありますが、パスカル・マニエの本にも書いてありますが、必ず形成した後には印象前にエッチングしてボンディングしているわけです。そして表面を一層コーティングしています。もちろん次に最終的にセメンティングするときもコーティングします。ボンディングしてね。でもプロビジョナルレストレーションを被せるのが一番むつかしいです。方法は二つあります。ひとつはこのケースでやっているのは、このケースはリダクションが大きく、バッド・ジョイントで乗っていますので、これはテンポラリーセメンテーションします。作るのは簡単なのですけれどね。元の歯をシリコンで印象しておいたら、そのシリコンの印象のなかにレジンを入れて、圧接したらラミネートの皮ができます。レジンベニアができますから、それをきれいにして後はくっつけるだけですが、少なくともテクニシャンにオーダー出すと2週間くらいかかります。その2週間の間にテンポラリーレジンベニアが外れてしまう、そうすると歯質の汚染が始まります。一番嫌なのは着色です。色が変わってしまう。変わってしまうとどうかというと、シェードテイキングして作ろうと思っているベニアの色が変わるわけですから、セメンテーションするときに下地の色が変わっているわけですから、周りの色と全然ちがう色になります。それが一番こわいですね。ですからプロビジョナルレストレーション、これは結構ストレスになります。まずここで紹介させていただくプロビジョナルレストレーションは通常のテンポラリーセメントを使っています。通常のテンポラリーセメントを使っているかぎりは、テンポラリーセメントを除去しなければボンディングできませんから。なおかつユージノール系のテンポラリーセメントは絶対禁忌ですよね。絶対レジン重合しませんから。ですからそれ以外のもので、最終的に歯面をきっちりと清掃してからボンディングする。手間がかかります。ここに書いてありますDots bondingというのがあるのですけれども、これは点々でエッチングするのです。それかボンディングしておいたらボンディング剤を点で盛っていくのです。点々で盛っておいてこのレジンの皮をくっつける。それだけです。難点はひとつだけ長期だと変色しやすい。どうしてもラミネートベニアの仕事というのは一週間くらいで仕上げてもらうのが一番ありがたいですね。

に面倒なことがある。セメンテーションです。基本的に選択すべきベニアのセメントはクリアにしてください。クリア以外は使わないように。クリア以外のセメントを使うということは、それは色がどうなるか分からないということですね。そしてさっきもお見せしました360度ベニアをセメンテーションするときには、まずそれを入れてしまう。なぜかと言うと、それのセメンテーションをクリアにしても、その色がどう変化するか読めないからです。ですから少なくともセメンテーションしてから2〜3週間はその色が落ち着きません。そしてその色が落ち着いてからでないと隣在歯の仕事ができません。色を決められません。ですからこういう風な単独歯であれば、必ずクリアのセメントをまずファーストチョイスにしてください。その次にはクリアでありながら明度の高いもの、ここで使っているのは少しホワイト色の強いクリアなセメントを使っています。それはなぜかと言うと、下が着色しているからですね。0.3~0.5、厚いところで0.7mmの仕事、そこにテクニシャンは象牙デンティン層を盛って、エナメル層を盛ってという仕事をしますけれども、じゃあ表層の色を隠すものを作れるかというとできません。必ず下地の色を拾います。ですからその下地の色をどういう風にコントロールするかというのはテクニシャンの腕であり、最終的には術者のセメンテーションの腕になるわけですね。ですから一番選んでいただくセメントはクリアですね。その次にはクリアのホワイトを選びます。決してオペーサスな色を選んでは駄目ですよ。そうすると下地をまったく消してしまってセメントの色しかでてきません。真っ白なセメントでしたら真っ白なベニアの色になりますから。それはもう使えません。それとセメンテーションするときには、何回も言いますが、このライトクリア使いますね。こうやってブロックはしているのですけれども、そしてもちろんここに見えているのは圧拝コードです。そこまでやるんですけれども、硬化してしまったらまず見えません。特に当日は。だからマイクロスコープをかけて、もしくはルーペで拡大しながら、ちまちまとっていくのですけれども、少なくとも一週間から二週間経って、ベニアの色がレジンセメントと馴染んで落ち着いてきたときに、周辺に残っているスモールピースのレジンセメントは吸水しますので、吸水するとちょっと判りやすくなります。だからこの仕事をするときには、くる度に拡大して探りながら、レジンをとります。実はこの患者さんの上顎にレジンセメントで装着してから4年経過して、一箇所だけアブセスができました。アブセスというか歯肉からは排膿しました。リコールの時に。何が起こっているのかと思って探ったら、レジンセメントが一箇所だけ残っていてびっくりしました。ですからそれほど判りづらい。だからできることと言えば、最後にヒューフレディーの3Aの深針というものがあるのですが、その先端を研ぎあげて、50μくらいにして、その50μで全周を探るしかない。それと拡大して見る。ですからレジンセメントを使った場合は中止しなければいけない。除去するのが大変というわけです。これはベニアで右下犬歯を補綴後2年後の状態ですが、こうなったら、どのような処置をしたかは舌側から見ないと判りません。装着後は必ずX-線を撮影します。当日X-線を撮影すると徹底してレジンセメントを除去したはずなのに、セメントが残留しています。360度写っているわけではないですから、確認できる近遠心の他にも唇側と舌側にもセメントが残っている可能性があります。

こんなレベルですから、レジンセメントを使うときには、ベニアの仕事でもどんな仕事でも要注意です。

徹底的にセメントを除去してください。

次は54歳くらいの患者さんです。一番最初にまとめて仕事をしたケースなのですが、もう既にコンポジットレジン充填が終わっているのですが、先ほどのマニエのリサーチにもありましたように、コンポジットレジン充填をきっちりと仕上げておけば、ベニアの形成は充分にできます。ただその下地にコンポジットがたくさん残るようであれば、問題があります。先ほどお見せしましたポーセレンのスモールピースを填入したものはほとんど歯質と変わらないですけれども、コンポジットレジン充填は変色の可能性がありますし、充填時にすでに色が違います。したがって、コンポジットレジン充填の修復量が多い場合は隣接面を向こうまで抜いてしまう支台歯形成を行います。

基本形成は変わりません。この患者さんの場合、このようなファセットがあり、年齢も54歳であったことを考慮しまして、切縁は落としてありません。隣接面にコンポジットレジンが充填されています。それをベニアの中に取り込むのか、取り込まないのか、この場合、32|23はコンポジットレジンをベニアの中に取り込んでいますが、1|1の近心はコンポジットレジン充填の量が多いので、近遠心隣接面を抜いています。抜かないと一番大事な正中の色が合わせられない。それともう一点、この人の主訴である隙間ですね。『年取ったから隙間ができちゃって』巷間言われますように、年齢と歯肉のリセッションの関係ですが、これはアカデミックなリサーチによれば関係ないそうですね。なぜかと言うと、人の歯はずっと萌出し続けているからそれに応じて、歯槽骨は膨隆し続けているということは歯肉も上がってくる。退縮はオクルージョンとペリオにより、または両者の複合により萎縮するような要因がなければ起こらない。だからもっとしっかり磨いてもらわないと、この隙間を詰めてもまた下がりますよという話になります。しょうがなく隣接面を膨らませて隙間を埋めようとすると、先ほど述べましたように、この患者さんの場合、歯肉縁上のフィニッシングラインでいいのですが、このブラックスペースを埋めようとすると修復物の形を変えて、つまり長いこれがプロキシマル・ロング・コンタクトです。そして歯肉に沿った形状をカントュアと言います。これがジンジバル・ティッシュサポーティングまたはハーフポンティック・テクニックです。次にプロビジョナルレストレーションを装着しました。あまりきれいじゃないですね。きれいじゃないですが、これがさっき申しましたダッツで、ドットでエナメル質とボンディングしたところです。エッチングをドット状に行った上に、ボンディング剤を皆かけてしまうのですね。そうすると接着するところはドットの上だけですね。そしてボンディング剤かけてシェルを乗せたら光重合させて、プロビジョナルレストレーションをここにステイさせます。これは最終的にベニアが仕上がったところです。こんなに薄いですが、どうやって盛ったとしても、エナメルの範囲でしかポーセレンを焼成できません。ですからA-1だったらA-1の、A-2だったらA-2のシェードベースしか厚みがないから作れません。けれども、隣接面の抜いた部分は抜けているわけですから、必ずデンティンから焼成することができます。だから天然歯様に作れるということですね。それでトライアルします。トライアルも気をつけなければならないのですね。トライアルのときに、よくする間違い、それはコンポジットレジンインレーもそうですし、ポーセレニンレー、ラミネートベニアすべてそうですが、よくやる間違いがセメンテーションしてないのに力をかけてしまうということですね。これはセメンテーションして初めて、歯と一体となって初めて強度が出るものです。これはさっきのマニエのリサーチにもあったとおりです。だからセメンテーションしていないのに咬合圧をかけたら皆バリバリ割れます。

これは最終的にベニアが仕上がったところです。こんなに薄いですが、どうやって盛ったとしても、エナメルの範囲でしかポーセレンを焼成できません。ですからA-1だったらA-1の、A-2だったらA-2のシェードベースしか厚みがないから作れません。けれども、隣接面の抜いた部分は抜けているわけですから、必ずデンティンから焼成することができます。だから天然歯様に作れるということですね。それでトライアルします。トライアルも気をつけなければならないのですね。トライアルのときに、よくする間違い、それはコンポジットレジンインレーもそうですし、ポーセレニンレー、ラミネートベニアすべてそうですが、よくやる間違いがセメンテーションしてないのに力をかけてしまうということですね。これはセメンテーションして初めて、歯と一体となって初めて強度が出るものです。これはさっきのマニエのリサーチにもあったとおりです。だからセメンテーションしていないのに咬合圧をかけたら皆バリバリ割れます。

トライアルします。トライアルしてみると下地の色がこれだと分かります。これにクリアのレジンセメントを使うと、患者さんの求めている色と違うことが判明します。下顎の前歯の色とは異なります。だからこの場合、少しライトのクリアを使います。たまたまライトクリアのレジンセメントを使った患者さんのケースを先生方にお見せしますけれども、先ほどの若い患者さんのケースは皆クリアを使っています。セメントのベースはクリアです。オペーシャスなレジンセメントは絶対使わないでください。ですから私がよく使うのはペントロン社のルートイットというレジンセメントを使います。もしくはイボクラのバイオリンクとかもあるのですけれども、そういうものには必ずテストシェードペーストというものがあります。そのレジンセメントと同じ色をしたシェードのすぐとれる塗料がありますから、それをまずベニアの内面に入れてトライインします。そして余剰のものを流したら、それを見て、患者さんにも見てもらって、どの色を選択するかということをやります。でも選択肢は二つ以外にほとんどありません。それはクリアかライトクリアで、オペークは使ったことがありません。これは5年後の状況です。

この患者さんの嫌がっていた歯間部の空隙はカンテュアで閉じているわけですね。見ていただいて分かるように、X-線写真の隣接面の不透過像はレジンを充填したところです。そこをポーセレンでリカバーしているわけですね。

ブラックスペースをどうやって埋めるのかという問題ですが、埋めようと思ったら、今の状況でしたら、歯肉縁下からカントュアを立ち上げないとできないということですよね。

次にこれは歯医者さんが患者さんです。この部分に水平的な骨欠損があるが故に、歯間乳頭の歯肉が落ちていますね。

それと左右中切歯のトュースサイズが異なります。

この人はもちろん矯正の既往歴がありますので。それから1|は失活歯です。それで色が変わっていることと、このブラックスペースが気になるから治して欲しいということです。さっきの二十歳の男の子は中切歯間のスペースを埋めるために、舌を突っ込んできます。いわゆるタングスラストです。この人は違うのですね。舌はあたりまえのポジションにあります。でも隙間があるからものを埋めなければなりません。陰圧にしないと我々の生体というのは、ものを飲み込むことができません。陰圧にしないと我々の生体というのはものを受け入れられませんから。それでまずトライアルしたのが、これはコンポジットでやろうよということでした。面倒だから。面倒なのは嫌ですよね。それでコンポジットレジンを盛りました。実はこのほうが時間がかかるのです。2時間くらい。患者さんとしては納得します。

「あ、これだったらいいです。」

「でもちょっと明度が違うよ。」

「うん、これくらいなら全然問題ないです。」

もちろん漂白します。この状態からこの状態に変わりました。で、OKなのですね。

でも1年経ち、2年経つうちにポロポロとんでくるのですね。最終的にはこれはもう無理だと。

ですから1|に歯を削らずに充填していた、接着していたコンポジットレジンを皆除去してしまいました。幸いなことに|1のほうが大きいですよね。さっきの二十歳の子と違い1|は少し舌側に入っている。それで表面だけをわずかに、本当にわずか一層だけエナメル質を研磨する感じで除去し、そしてほとんど歯を削らずに印象をとって、シェルを作りました。なんでたくさんシェルがあるかと言うと、ヨーロッパにMr.ゲラーというクリエーションという陶材を開発した方で、世界中にファミリーを持っている方がいます。いわゆるポーセレンの。彼らはMr.ゲラーというところから、クリエーションというパウダーを携えて、世界各国で開業しています。世界各国で開業している人たちは、ゲラーからそこに名前をもらえるのです。その名前を貰っている日本人の26〜27の青年が非常に優秀な子なのです。優秀な子なのですが、彼は心底分かっています。1本の中切歯の修復治療というのは一番むつかしいのです。テクニシャンを殺そうと思ったら、これを3ケースくらい出してやると死にます。確実に。何故かというと、合わせることができない。ですから彼のやってきたことは5枚焼いてきたのです。5枚焼いてきて、さあ、選べというわけですね。

「お前、よく5枚も焼いたな。よっぽど暇なんだな。」

と言ったのですけれども。今度はこっちが大変なのですね。5枚をトライアルして、トライアルする度に、トライインペーストを変えていくわけです。で、形もそうですよね。でも形状をここでは変えられません。さっき言いましたように、少しの圧力を加えただけで割れます。これは。だから5枚、トライアルしました。トライアルして、患者さんが歯医者さんですから、

「さあ、どれにしよう。」

でも、どうしても明度の問題が残ったので、じゃあ、この時点で一回ブリーチングしてやろうと考えました。ブリーチングして再度トライアルしました。最後に残ったのはこの2枚です。

「私には判らないから選んでよ。」

と言って、選んでもらいました。彼女に。そして最終的にこれが選ばれたのです。

「2|の近心のCR充填は治さなければいかんよね。」

と言うのですけれども、

「東京の大学の有名な先生にやっていただいたので。」

ということで、最終的に仕上がりました。さっき言いました、あの隙間を何が埋めていたかというと、これなんです。彼女も東京からうちに来るので、コンポジットレジンを外して印象をとって、その間、2〜3週間かかりますので、つまり、舌を押し付けるのではなくて、口唇の粘膜が吸い込まれるわけです。そうしないと彼女は口腔内を陰圧にできないのです。だから、違和感があって、痛みがある。我々の生体というのは、うまくできています。先生方も下顎の遊離端の何もないところにいきなり入れ歯でもインプラントでも入れて、噛めるようにすると必ず頬粘膜を噛むと言われます。あたりまえのことなのです。そうやって軟組織は変形します。その変形が大きすぎると、今度、外側の皮膚の感じが変わってきます。それが顔貌が変わるということなのですね。我々の審美というのは、元に戻してあげること、元に戻してあげれば、生体がそれに応じてくれるということです。でも、生体がどう反応するかはよく観察してみなければ分からない。この人はこうやって、粘膜を吸い込んで陰圧を作っている人です。で、ラミネートを装着して一ヶ月経過したら、もう粘膜の痕はないです。それでこういう状態です。ハーフポンティック・テクニック。クラウンカントュアでこの部分のスペースを埋めたのですね。で、ハッピーですから、一枚写真頂戴よと言うと、

「お前、ここまでしなくていいだろう。なんかスターか?」

ですからラミネートベニアというのは非常に有用です。さっきも言いましたように、削るのだけど、一番侵襲の少ない削り方です。そしてそこに張り付いたものは様々なベーシックリサーチを見ても、天然歯とほとんど変わらない強度を持ちます。こんなものって、あまりないですよね。だから選択肢としては、我々にとって非常に有利に働くものだと言えます。

そしてそれの発展形です。何も唇側だけでする必要はない。

|1はもう失活歯でした。1|は生活歯です。カリエスだらけで、若いおねえさんなのですけれど。25歳かな。もうちょっときれいにならないのかな。どうしてここまでカリエスにするのかな。そして下顎はこれだけdiscrepancy(食い違い)がありますね。いわゆる空隙と申しますか、オープンバイトと言いますかね。通常でしたら、1|1のカリエスをとりきってやって、コンポジットレジンでビルドアップして、もちろん漂白します。ブリーチングしておいて、色が落ち着いたら、ベニアの形成をしてラミネートをやるのですが、このケースの場合、オープンバイトですので、そして彼女に聞くと、これは不都合であるということであるので、じゃあ、ここを修復で埋めなければならないということになります。埋めるには、この厚みを出さなければならない。かなりの厚みです。ですので、これはしょうがないから360度削るしか手がない。そして|1はもうプロビジョナルレストレーションが入っています。コンポジットレジンの修復は終わりましたので、360度のベニアの形成をやっていきます。これは先ほどと一緒です。先ほど使ったのは三つの切削部がついたバーですが、これはこのひとつのホイールだけで、この部分が0.5mmです。ですからオリエンテーショングルーブを入れて、そして形成をしてしまいました。360度ベニアというつもりだったのですが、あまり前歯の突出量が大きかったので、1|唇側の一部だけ、象牙質が露出しています。ですので、形成したらすぐにEDTAと35%グリセルモノメタクリエート(GM)水溶液、ボンディングというシークエンス(sequence) は踏んでいます。けれどもやはりこの状態ですからあまりストレスはないのです。外しても次に来たときあまり痛がらない。風を吹きつけたり、冷たい水をかけたりすると沁みますけどね。それで上唇小帯がここまで入り込んでいるので、レーザーでとるついでにピグメンテーション(Pigmentation着色)を少しでもとろうねと言って、焼いているところです。もう一回焼くともっと綺麗になるのですけれどもね。まず最近の若い女の子というものはタバコを吸います。いけないですね。この子はどうもそうじゃなかったみたいですね。だいたいこういうのを見ると

「お前、タバコ吸っているだろう」

と言いますが。

「タバコ吸う奴は頭の悪い奴だ」

といつもはっきり言ってやるのですがね。あまり応えないですよね。これは手順としてはまず1|を仕上げてから|1なのですけれど、これはさっきのMr.ゲラーのところで修行した内海(参考:世界一の技術を持つといわれている技工士ウィリー・ゲラーに認められた技術の高い歯科技工士の世界的グループ「オーラルデザイン」のメンバー(日本には現在2人)。使用するポーセレン(セラミック)はスイス製「クリエーション」。)というテクニシャンに任せた仕事なので、彼がいっぺんにやってくれました。これがトライインペーストです。ライトクリアを使っています。1|はこのような色の歯でしょう。この子は印象をとってから1ヶ月から2ヶ月の単位で来ていますので、少しずつ変色するのですね。ですので、もう一度漂白します。最終的に、トライインするときにはやはりライトかクリアのトライインを入れて色を見て、それから最終的なセメンテーションを行います。これが最終的に終わったところですね。何回も言っていますように、X-線を撮影して、このフラグメンテーション(fragmentation断片化、破砕)をとらないと後でたいへんなことになります。こういう状態でファイナルを迎えたということですね。

これはまた違うケースです。

たまたま同時期に同じようなケースが来ていますね。|1は完璧に死んでいますね。1|は生きています。よく同じようなケースが来院するなと思うのですけれども、もうすでに支台歯形成が終わっています。

1|1のむし歯は詰め替えています。なにをしたかと言いますと、360度ベニアで形成しています。ただ前歯の突出度がかなりありましたので、切縁でカットしましたので、切縁部に一部象牙質が露出しています。1|の口蓋側のエナメル質はほとんど丸のまま残っています。唇側へ出ているので削る必要がありませんから。|1を見ていただけば分かるようにかなり中に唇面を入れています。だから1|の厚みはほとんどなく0.3mmほどしかありません。これはファイナルリザルトなのですけれども、1|も一度漂白しています。ブリーチングしておいて、シェードベースが2|2に合うような色を選択しておいて、このように仕上げます。その術後です。1|はオールセラミックスクラウンのプロセラというシステムを使っています。

1|は360度のラミネートベニアクラウンです。この歯頚部の仕上がり、これをクリティカルセラミックゾーンと言うのですが、ここの仕上がりがセラミックの修復では一番むつかしいのです。むつかしいのですが、オールセラミックスというのはベースの歯がきれいであればあるほどうまくいくのですね。

これはこういうふうなプロビジョナルレストレーション、もうちょっと汚かったのですが、それが入った状態で来た子なのですね。最初は根充のしていない状態で来たのですが、ここに見てもらうように

1|に根尖病巣があって、切歯孔のようにも見えますが、治療中2ヶ月来なかったら、プロビジョナルが外れていてすでに形成済みでしたので根管治療が必要になりました。でも|1の歯髄は残っているのです。それと幸いなことにトュースポジションを見てみますとさっきのケースと同じで唇側に転位していますね。でも前削ってくれた歯医者さんは唇面のエナメル質は残していてくれたのです。あまり削っていなかったのですね。ですから1|は360度ベニアで唇面歯頚部の一部は少し象牙質が露出しています。一番このケースは難しかったのです。何が難しいかと言うと、ジンジバルレベルは整えているのです。実はね。でも最終的に2|の位置と|2の位置と犬歯の位置が違い、咬合平面に少し歪みがあります。まっすぐに写真を撮影するとこうなりますが、切縁のラインが歪んでいるので、1|1の長さが合いません。笑ったときに歯頚部が見えませんので、それはいいのですけれども、それで最終的にテクニシャンに仕上げてもらいました。それで仕上げてもらったときに、|1の歯が1|よりわずかにサイズが大きいのですね。それでどうしても|1の歯が大きく見えますし、天然歯、生活歯ですので、削りこめませんよね。つまり唇側の厚みを少しだけ摂ったような状況になっています。ですので、この|1が大きいのは嫌だ、確かにそうなのですね。じゃあ|2の隣接面にカリエスがあるから、こちらでワックスアップをしてシェルを作って、|2のカリエスを除去するとともに、その形態をクラウンシェルで整えてやれば、|1の遠心唇側面は少し落とすことができる。形態を整えてやることができるというわけですね。それで最終的に仕上げましたのが、この状態です。これで患者さんとしてはOK。|2の近心にわずかに貼り付けています。左上は貼り付けた当日なのでファイナルの研磨はしません。右下は研磨が終わっています。コンポジットレジンは充填してすぐに研磨したとしても、変色が必ずあります。ですから一回変色させてしまってから、その表層を剥がすという意味で、吸水させて、つまり次のアポイントメントで最終的な研磨を仕上げます。ですから一回ではやりません。一回目の研磨というのはバリをとって、そしてスムーズな面をつくってあげるだけ。最終的にギャップをとって、きれいに研磨を仕上げるのは必ず1週間〜2週間おいてからやってあげたほうがより変色を少なくすることができます。これはファイナルリザルトですね。

じゃあ、総合的なベニアの話の結論をしつこく何回も言わせていただきますと、削り取ってしまって象牙質をむきだしにするということは抵抗力のない歯質を出してくるということです。けれどもエナメル質の範囲というのは、ある意味非常に抵抗力のある処置になりますので、なによりも再治療がやりやすい。そして生体に対する侵襲がすくない。そういう意味で、できるだけエナメル質内で処理をしたいというのが、我々の、歯科医の夢だったわけです。それが今非常に簡便にできるようになりました。選択肢はたくさんあります。コンポジットレジンもあれば、硬質レジンというのもあります。それとラミネート、ポーセレンです。ポーセレンの選択肢もあります。ですからそれを症例に応じてうまく使い分けていきたい。もちろんそれは、患者さんのファイナンシャル・ケイパビリティー、いわゆる予算に応じて色々なことが選択できる。患者さんの選択肢も広くなるし、我々の選択肢も広がる。一番ストレスのないのは、削って痛い、沁みるというのがない。これはありがたいことです。それでなによりも結果がきれい。こんないいことはないのですけれども、ではうまく適応するかというと、なかなか適応するケースというのは少ないかもしれないですね。けれども失活歯だから、すぐに軒並み削ってしまうということを考えずにすむというだけでもいいかもしれません。ですので、そういう意味で削るよりも足すこと。言葉として、ミニマル・インターベンション、ミニマム・インターベンション(Minimal Intervention、Minimum Intervention)というのがあるのですけれども、あまりそういう言葉は好きじゃない。必要があれば、象牙質まできっちりと支台歯形成をしてあげて、そこに修復治療しなければいけないケースがたくさんあります。そのときには本当に真剣に取り組む必要があります。だから、すべて真剣に取り組まなければいけないのですけれども、その適応症をきっちり考えなければならない必要があります。だから、今まで失活歯であったから弱いから、歯質がこれだけしか残っていないから使えないというものが、こういう材料の進歩で、それをあまり削らずに、侵襲を加えずに使えるようになったというだけでもありがたいですよね。そういう意味でこういう治療法というのはもっともっと進んでいくと思います。さっきのベーシックリサーチについてはナショナルコンセンサスを得たことを、先生方にお話いたしますので、自信を持ってください。ですから天然歯もベニアを貼り付けたものも、エナメル質がきっちり残っていれば、強度に差はないということです。

じゃあ今度は総合的なお話を最後にさせていただきます。

どちらかと言いますと、私も身に余る紹介をしていただいたのですけれども、元々修復治療をやっていた人間なのです。ですから私の師匠はと聞かれますと、もう亡くなりましたが Dr. Raymond L Kimレイモンド・キムです。彼はクラウンブリッジワークの補綴の専門医です。ただ彼のおもしろいのは、ロマリンダ大学という所で総義歯学の教授をやっていたことです。その方がUSGへ移って、歯冠修復学のサブディレクター、助教授なのですけれども、MULTIDISCIPLINARY TREATMENT CENTER総合診断科という学科を作って、そこのチェアマンでしたから、話がややこしいのですね。ですから補綴の助教授でありながら、補綴の教授の建てた治療計画を彼がジャッジメントする、そういうややこしいポジションにあったのです。

「総義歯からクラウンブリッジワークにどうして変わったのですか?」

と訊くと、

「うん。総義歯にはなにもやることがない。ただ、総義歯で学んだことはすべてクラウンブリッジワークに使えることができる。」

ですから、私もレイモンド・キムの薫陶を受けましたので、修復治療というのが私のベースです。でもじゃあ修復治療をしようと思うと、歯周のことをしなければならない。その前に実は根管治療なのですけれども、根管治療も実はもうお亡くなりになられた  という大家がいましてね。エンドのスペシャリストの。彼に弟子入りして教えてもらって、最初はエンドドンティストになりたかったのです。でも、エンドドンティストでは、もう飽きてしまったので、やはり修復を目指しました。でも修復しようとすると、今度はペリオのことをしなければいけないというわけで、ペリオのスペシャリストに弟子入りしまして、ペリオのことをやりました。ペリオのためのペリオというのは見えないですね。我々は一口腔一単位として処置しなければなりませんから、修復治療を行うにあたって、歯周を扱うコンセプトというのは一番大事です。ですから、いつも修復の観点から見た歯周形成外科という処置しかしてなかったので、どうもそれが良かったのかなと思います。だから専門は何ですかと言われると、好きなのは修復なのですが、歯周外科も嫌いではありません、と答えます。ただ、歯と歯肉と歯槽骨の三者の関係、我々はそれだけを覚えれば仕事ができるわけですから、そんなに難しいことではなく、簡単なものです。それを一生懸命やる必要はあるということですよね。昔『一から学ぶ歯周外科』という本を書きました。当時、どんな海外の本を読んでも、自分の欲しい情報はどこにも書いてありませんでした。書いてないので、しょうがないので自分で書いてやれと思って書いたのです。新しい版をつくるために、2年前に絶版にしたのですが、医歯薬の方から、次の本を書けと言われていて、2年間ずっと放置しておいたのですが、いよいよ編集者から

「私が自殺すればいいのか。それとも先生が自殺してくれるのか」

とそこまで言われたので、今年の夏死に物狂いで書いたのです。書いた割には、もう2ヶ月経ちますけれども、梨の礫(つぶて)で、11月の頭には出す予定であったということらしいですね。ですからそういう本が仕上がってまいります。そこには、私の考えている、私の考えているということは、もう百年も二百年も前から歯科に携わる人は考えているわけです。ですから、そういう集大成ですね。何かと言うと、いわゆるDentogingival complex と修復治療の関係について、書けるだけ書きました。だから歯周治療の本というよりむしろこれは修復治療の本と言える感じに仕上がっていると思います。まだ出来ていませんからね。私も原稿書いて送っただけですから、分からないのですが。もしお目に留まることがあれば、一度ご覧になってください。

そこで一番言いたかったことというのは、非常に簡単なことですね。これだけなのです。ではこれはどういうことかと言うと、歯肉の辺縁形態と歯槽骨の辺縁形態と歯の有するセメントエナメル境の形態は相似形であるということです。これの学術的なバックグラウンドを見つけるために10年かかりました。これに関する発表を聞きたいために、アメリカやヨーロッパの色んな学会に行きました。判ってしまうと別にどうということはないですよね。今だったら、そういう論文を紐解けば、そういうことかと分かるのですが、実は分からなかったのですね。これが分かれば、修復治療をした後のgingival recession(歯肉の後退)がなぜ起こるのか、防ぐにはどうしたらいいのかということが出来るようになるわけです。ですから、先生方は歯肉の辺縁形態と歯槽骨の辺縁形態とC-E-junctionの形態は相似形であるということだけ覚えて帰っていただければよろしい。歯周外科をするとき、骨を触るとき、この三者の形状が一緒になるようにやってあげれば変な形には絶対なりません。修復治療が楽になります。そういうことなのですね。そのベーシックなコンセプトを考えるにあたって、一番大事なことというのは、次のことです。これはBiologic width生物学的幅径ということを臨床的に捉えたものですね。我々通常、歯槽骨頂から歯肉の辺縁まで3mmの距離を必要としています。オリジナルのBiologic widthはガーグリオン?という人が27体の死体から出したものであって、ここに1mmの結合織層があって、そして上皮付着が約1mm、まあ0.5~1.03mmというデータがあるのですけれども、そのBiologic widthが2.04mm、それに歯肉溝の0.6mmを加えて、Total biologic widthと呼ぶのですけれども、でももっと簡単に考えると歯槽骨頂から1mmの結合織層というのを人は必ず持つのです。でもその上は可変領域になるのです。つまり上皮付着は可変領域になります。更に歯肉溝はもっと可変領域になります。ですからJ.C.KOIS(Kois JC, Altering gingival levels: The restorative connection. Part I: Biologic variables. J Esthetic Dent 6:3-9, 1994.)という人が、1本の歯でもこの長さ(歯槽骨頂から歯肉辺縁までの長さ)が違い、ましてや一人の患者さんの口の中でも異なる歯ではもっと違うと言っています。ですからそれをNormal crest、High crest、Low crestと名づけました。W という人が、Pennsylvania大の教授なのですが、彼がthin scallopとflat thicknessの歯肉の形状を分類しました。それよりもこのBiologic widthの考え方をしっかりと捉えたほうがいい。だから1本の歯に対して360度、骨から歯肉までの距離が違うのです。例えば10年単位で歯周外科をしました。それは歯周ポケットをなくすための外科です。それを10年単位でフォローアップしてくると、プロービングチャートをとっていっても、骨の欠損もない、炎症もない、けれども歯肉溝の深さはどうかというと、だいたい1〜3mmになります。1mmだけしかない人というのはまずありません。必ず歯間乳頭部では3mmあっても不思議はありません。だから正常歯肉溝の値は正常値が平均0.69mmと出ていますが、私の頭の中では1〜3mmです。そして1〜3mmという距離で、前提条件は炎症がそこには存在しないということです。それがDent gingival complex(The dentogingival complex consists of connective tissue fibrous attachment, the junctional epithelium (epithelium attachment), and the sulcus.)を考えるときの一番大事なキーワードになりますね。このキーワードを見つけるのに、どれだけ苦労しましたか。自分の臨床の実感の中にはあるのですが、尚且つそれをベースとしてアカデミックに表現してくれるものを探すわけです。取り組んできたテーマはGingival recessionです。歯肉の退縮。どうして歯肉は退縮するのか?何が悪かったのか?マージンがこれだけフィットしているのに、ペリオの処置は完璧にやった。まだ若年者である。どうしてリセッションが起こるかということですよね。それはもう簡単なことです。こういうケースがあります。

で、結論ですね。歯肉は厚みがなければ高さを維持できないということです。このケースの場合、リセッションしているわけですが、このケースを治すために、再度修復治療をして更にリセッションしないようにするためにはどうしたらいいか?リセッションするにはするだけの理由があるのですね。それには1980年くらいからそれについてのリサーチがあります。咬合の問題、もちろんメインテナンスの問題、それとペリオの問題があります。様々の複合要因が絡まってリセッションするのですけれども、でも一番の要因と言うのは解剖学的な問題、つまり骨と位置と厚み、歯肉の厚みです。このケースをどういう風に仕上げるかというと、まずこれ以上リセッションしないように、ここに歯肉の移植をする必要があるということですね。こういうふうに。そしてできれば歯根面が露出しているわけですから、それを被覆してあげる。被覆することによって、そこに入る歯冠修復物の形状が反対側と同じような形状になる。で、まあ、こういうツールもあります。いわゆる実体顕微鏡ですね。実体顕微鏡下で外科的な処置をしてあげる。実体顕微鏡、さっき申し上げましたように、コンポジットレジンの充填、もしくはレジンを除去するときには、本当に有用な武器です。少なくとも何回も言いますけれども、ルーペは先生方もつけていただいて、そういう拡大して細かい作業をするトレーニングをすべきだと思います。実体顕微鏡の使用により、組織侵襲を最小限にし、的確な縫合による瘢痕の軽減、微小なフラグメンテーションの除去を図ることは、今はまだマニアックな世界と言われているのですが、アメリカでしたら今、エンドドンティストは実体顕微鏡がなければスペシャリストの称号をもらうことができません。つまりエンドドンティストという看板をかけている人は必ず実体顕微鏡下での仕事ができるということですね。私も実は一番最初に実体顕微鏡の使い方を習ったのはエンドドンティストなのです。彼は今から7年前に当時実体顕微鏡を使った根管治療を始めて、一回の処置で2時間、実体顕微鏡下で根管治療をします。でその2時間に対するチャージは答辞で1000ドル、15万円くらい。で、いいなあっと。一日一人診たらいいのではと。二人診たら、蔵が建つよなっという世界ですよね。本当にうらやましいなと思いました。うらやましいなと思っていたら、去年聞いた話だと、上顎の7をもちろん拡大鏡しながら、アメリカで今一番有名なエンドドンティストが根管治療したら、一万ドル、130万円くらいですか?うーん。私はなんなのと考えてしまいますよね。そうやって考えていて、アメリカにはちゃんとヒエラルキーがありましてね、スペシャリストと呼ばれます。これは歯学部で死に物狂いで勉強して、きっちりとboardボードを獲って、そしてトップの成績でないと上がれないですよね。大学院に。そしてその人たちが、色々な科を回って、自分はこの学科でやろう。もしくは科を回る前に、そこのボードを獲りにいくわけです。エンドやペリオの。エリートがもちろんそこに行きます。それをしない人たちはいわゆるGPですよね。General Practitioner (GP)

すべての治療をするわけですね。特化しません。もちろん、スペシャリストと言っても何をやってもいいですよ。私はエンドのスペシャリストだけれども、支台歯形成もするし、ペリオもやる。それはかまいません。かまいませんが、けれども、向こうは患者さんをお互いにシェアしあっていますからね。それでGeneral Practitionerという我々と同じ何でも屋に、

「根管治療ってどのくらいチャージをするの?」

と訊くと、

「1根管、300〜400ドルくらいです。」

と言うから、

「えっ。6は3根管だから1000ドルくらいですか?」

と訊くと、

「ええ。」

これが街の一般開業医ですね。もちろん、いい所で開業していますが。ですから私ってなんなの。それで点数はどうかなどと考えると、馬鹿馬鹿しくなってきますね。そういう制度の差はどうでもいいです。日本もこれから必ずそうなりますから。またならなくてはいけませんし。保険制度崩壊しますからね。とりあえず、こういう風なツールを持ってする仕事も、基本的にはしなければいけないのですね。何回も言いますけれど、アメリカではルーペで拡大する仕事を学生がやっているのですね。それはトレーニングしなければできないことがひとつですね。日本でも歯科大学がそれを取り入れています。我々の処置というのは細かい作業を細かいところで見る処置なのです。もう40代過ぎれば、必ず老眼になるわけですから。で、ある先生がこのシステムを取り入れました。その方は60に近いですね。そして一番喜ばしいのは見えるようになったこと。私の歯科人生は伸びたと言っていました。それはその通りだと思います。自分の歯科人生を伸ばすためにはしっかり見えるツールを選ばないとならないですからね。こういうことをすることにより何が起こるかというと、より生体に侵襲の少ない処置ができることです。

で、これですね。こういうエイトオー8−0の細い糸で縫い上げて仕上げてしまいます。そうすると、5年間のフォローアップをしていますが、こういう状態です。スカーティッシュもほとんど残りませんし、変色もありません。そして、一番いいのは厚みのある歯肉でルートカバレッジしてあげたので、歯肉が退縮する恐れが少なくなったことです。

では最後の症例です。こんなケースです。さあどうしましょうというものですね。私ももういいかげん。こういうケースが来ると分からないのです。はっきり患者さんに言います。どうしていいか判らない。判らないけれども、とりあえず私の考えることに賛同してくれたら、治療に入ってね。仕上げはこうです。

ここまで来る間になにをしたか?こんな状態です。Skeletal classVです。第一選択肢は矯正で骨を切って、元に戻してあげてというものですが、それはもうあたりまえのことです。でもできない理由もあるのですね。それはどういうことかというと、患者さんが選ぶかどうか。彼は選べないですね。色んなところに治療されているのですが、基本治療がまったくできていない。これが現状ですね。これではだめです。

Tooth position、Arch integrity、Centric relation & vertical dimension holding, Functional occlusionこういうものを網羅してすべて考えて、治療計画を立てます。彼が矯正治療をできない理由は舞台に立つ人なのですね。けっこう有名で、少ないのですね。男のフラメンコダンサー。だから矯正治療とOrthognathic SurgeryそれかOrthodontic treatment選んでくれと言うとNoです。じゃあしょうがないから、これですね。

とりあえず、上下の被蓋関係だけはなんとしても変えないと仕事ができませんと説明しました。だからあえて、今矯正医にお話してもやりませんし、自分もやりたくないのですが、機能的顎矯正装置FKOを使いました。上顎の4前歯だけ前に出せば、なんとかなるのですね。処置としても。ですからこの方に取り外し式だから、とにかく毎晩つけてごらん。と言って、FKOを使うことを頼みました。被蓋関係がよくなればできるのではないかということで、治療計画を立てました。これはもう被蓋関係が変わった状態ですね。変わったと言ってもedge to edgeを少し越えたくらいですよ。完璧に被蓋関係は変わりません。SkeletalなClassVですから。だからこの4前歯を傾斜移動して前へ出しただけです。そしてこの入っているものを皆除去して、根管治療をやりなおしてから、いよいよGingival levelを整えていきます。もちろん少し前に出していますから、通常のプロビジョナルレストレーションを入れても少し小さいわけですよ。受け入れられません。ですからこのような処置を行います。これは診断用ワックスアップをして、この人の歯の長さを決めて、口腔内で患者さんに見ていただいて、調整をして、この歯の長さに応じた修復ができるようにこの歯と骨の状況を変えます。そしてさっき申しましたように、骨の辺縁形態とここに被ってくる歯肉の辺縁形態とC-E junctionの形状は相似形である。本来相似形ですね。少し修飾を加えます。骨の形態修正。このアールをきつくしています。こういうのを技というのですけれども。

最終的にここまで骨を落とします。そしてcrown lengthening procedureをします。術前術後で何が変わったのでしょうか?つまり歯冠の長さを出したわけです。これが6ヵ月後です。こういう状態です。すべての処置が終わっています。この当時はメタルのダウエルコアを使っています。

プロビジョナルレストレーションで、長さと形状とリップサポート等すべての総合評価を行います。

大事なのは、Incisal edge locationですよね。それとGingival levelです。

下顎は舌側に少しだけ倒れるのです。そしてこの部分の骨はclassVですから、deficienceのような形状になっています。これ以上、deficienceが進行したら困るのですね。下顎もすべてぼろぼろですから、修復の必要があります。ですので、これ以上ここの部分にリセッション(recession )が起きないようになるべく歯肉の厚みを増やすことと、それと、根面被覆を狙って、ペリオドンタル マイクロ サージェリーをしました。

私、面倒なので一度にやってしまう主義なのですが、大変なのですね。患者さんも。こういう状態で経過を見てあげます。下顎ですので、別にシビアなGingival levelは整えなくてもいいのですね。要はこれ以上リセッションしない状況をつくるのですよ。で、こうなりました。

最終的なファイナルレストレーションですね。上顎はオールセラミックス、いわゆるプロセラをベースにしたオールセラミックスクラウンを入れました。

下顎はこの4前歯に関してはベニアなのです。そのベニアもかなり削り込んで上から装着するベニアもあれば、前から装着するベニアもあり、色んな装着があります。このように隣接は皆抜いています。エナメル質は残します。ここらへん一部、象牙質が出ています。このマスキングが最終的にけっこう大変のですけれどもね。

ファイナルリザルトとしてこういう状態で、仕上がったわけです。

長い間お疲れ様でした。最後にちょっとだけサマリーを言いますね。我々の立てる治療計画は患者さんがどう受け入れてくれるかですね。でも、様々の選択肢があるわけです。ですから、それをいかに患者さんに選んでもらえるか。選んでもらえる選択肢が多ければ多いほど患者さんにとっては非常にありがたいですよ。我々にとっても、ひょっとするとショートカットできることが多い。その中で、今日紹介させていただいたラミネートベニアはあまり削らずにはりつけることができるか、もしくは単にボンディングするだけ、そしてコンポジットレジンを盛るだけでもかまいません。どれでもあれだけの効果を得ることができるということですね。どういうことを総合評価して患者さんの治療に取り組んでいけばいいと思います。私の治療は日本のどこへ行っても、私は変わらないと思います。同じ治療をします。そして同じ治療をできるかというとできるのです。なぜかと言うと、そうやって患者さんに説明するからです。それを受け入れるかどうかは患者さんの側の問題ですから。それで百人のうち百人が受け入れてくれる場所があるかもしれません。でも百人のうち3人が受け入れてくれれば、それはそれでいいのです。3人受け入れてくれるわけですから。スタイルはまったく変わらないわけです。私は和歌山と京都と東京で仕事をしています。ですので、ギャップがあるのですね。ギャップがあるのですが、じゃあ自分のスタイルは変わりません。需給関係が逼迫していると、日本中どこへ行っても聞かれますが、歯科医のスタイルがしっかりしていればそれは変わりません。恐れることは何もないと思います。ということで今日のお話を終わらせていただきます。どうも長い間ありがとうございました。

初めまして。茂野と申します。(中略)私の持論の中にありますのが、どこで開業しても変わらないということです。私の相棒であったDr.西川という方が甑島という鹿児島の西側の無医村で開業したことがあるのですが、さすがにそこまでいきますと同じだということが言えないですけれども、本土の中では変わらないですね。では何が変わるかというと要は、それは診療している側の意識であり、診療している側の意識がはっきりしているなら患者さん側の意識を少しずつでも、変えていけばいいのではと思います。私が最初に診療し始めたのは岐阜の方ですが、来る患者さんのほとんどがサンプラ冠ばかりでした。そういうのに慣れていますので、うちは田舎だから、こんな診療ができないとかいうことはないですね。ですから自分の思ったとおり、一番いいと思うものを患者さんに提示して、それを患者さんが受け入れさえしてくれれば、それは日本中どこへ行っても変わらないと思います。冒頭こういう話をなぜさせていただいたかと申しますと、ちょっと先ほど出ましたように需給関係が逼迫していまして、患者さんが歯科医を選択することができるようになってきた。ですから選択される側にまわればいいですね。それには様々なトリートメント・オプションというものがありますから、ニーズに合った患者さんの求めるものを提供できるということが一番いいのではないかと思います。ですから例えば自分がパーシャルデンチャーが得意であれば、それに特化してそれを必要とする患者さんに来ていただく、それが一番いいのではないかと思います。たまさか私はスタディ・グループを抱えておりますので、様々なトリートメント・オプションを持ちまして、それをスタディクラブに提供したやる必要性がありますので、ですから色々なことをするわけなのですが、でももうあまり色々なことをするよりも、むしろ自分の一番得意なことに特化していくことが一番じゃないかと思ったりします。今日本当にお招きいただきましてありがとうございます。私も実は審美とは自分の中で、10年間あたりまえにやっていたつもりだったのですが、でも先ほどもお話がありました師匠のレイモンド・キムが今年亡くなったのですが、彼にいつも言われていたのは、『修復治療というのは歯肉を傷つけてはいけない。生体の中であたりまえのように存在する必要がある。そして存在するのだから生理的なものでなければ、それは成立しない。審美的なことに今フォーカスが当たっているが、それはひとつの流行だろう。』とそんな風に去年、ディスカッションをしたときに言われたことがあります。まさにそのとおりで、先生方もそうであるように、私も審美的なことはあたりまえのことだと思ってやってきました。ただ昨今、やっと少しだけ歯科の材料学的なことが変化してきました。例えば私が卒業した1981年ですが、その当時、いわゆるボンディングという概念がかなり固まってきまして、光重合レジンがちょうど出始めの頃でしたが、もう充分この光重合レジンとボンディングシステムがあればどんな処置でもできると言われていました。でも実戦の場に出て、臨床をやっているとそんなわけにはいかないですね。色々なトラブルがあります。でもそういうこともおそらく120年以上かかって、少しずつ様々な材料学的なことが進歩しましたので、色々なトリートメント・オプションが出てきたので、そういうことの所を今日お話できればと思います。特に窪田先生の方から、リクエストいただきましたのがラミネートベニアです。中でもお話しするのですが、パスカル・マニエ。最初に見たのは5年位前のシカゴで行われたミッド・ウィンター補綴学会であり、そこで彼はデビューしました。まだ若く、確か30歳くらいだったと思いますがラミネートベニアのケースをたくさん出していました。その後ヨーロッパへ行ってもアメリカの学会へ行っても、彼のリサーチは今、世界を席巻していると思います。そういうことも含めまして、ラミネートベニアというある意味、おもしろい素材、実は20年位前から日本でもやってらっしゃる先生はいらっしゃいました。ただもっとボンディングに対するシステムが変わってきましたので、非常に損傷の少ない修復治療に持ち込むことができるということについてもお話したいと思います。今回のテーマとしましては前歯審美補綴の成功要件ということでお話させてもらいます。

我々が審美的な要件というものをどう定義するかということになりますが、あくまでも審美的な要件ですので、コスメティックではないですね。我々のできる審美は「破壊されたところを元あった状況に戻してあげる。」ことです。その元あった状況にあったもの、我々が扱う破壊されたものは、一番は硬組織ですよね。その次は軟組織があります。それを元に戻すには戻すなりの戻し方があります。それはすでに百年くらい前に完成されているのですね。ほぼ完璧な論文が出ているのが5〜60年くらい前です。それは総義歯学です。総義歯についての基本的な基準を頭の中に入れさえすれば、顔面に対する歯の位置、それをどういうポジショニングを決めるかということがすぐに分かるようになります。ですから我々のやっている総義歯学というのは審美修復治療の最前線であったわけですし、今もあり続けています。その要件ですが、特に顔面に対して基準線を設けてその基準線に対して何が大事かというと上顎の中切歯の位置です。上顎の中切歯の位置決めさえできればそこから咬合平面を類推する、もしくは作製することもできます。そして今度はバーティカル・ディメンジョン・オブ・ハイトつまり咬合高径をしっかりと決めてあげれば、その方の顎顔面の咬合というものが成立するわけですよね。つまり大事なことは顔面の様々な基準線を設けておいて、それに対して上顎中切歯の位置さえ決めればいいということですね。これがけっこう難しいのですけれども。今度は垂直的な基準ですが、我々の生体で左右対称の人間はありえないそうです。また左右対称であると見たときになんとなく違和感があるそうですね。ですから左右対称ではないのですが、一応の基準線を設けて、そして中切歯の位置決めをするのですね。ここらへのことはすべて総義歯学からきています。陶歯で作った義歯に対する完成された論文は、3〜40年前にできあがっていますね。それを見ると審美的な状況を考えることのすべてがそこに入っています。我々の歯科が求める審美はどこから来るのかということを知るためにもう一回総義歯学を紐解いてもいいのではないかと考えます。

今度は患者さんの顔面から考える中切歯の位置だけではなく、動的なものですね、Smile Line 笑ったときにどうなのか?Occlusal Planeの問題、それからIncisal edge locationが重要です。そしてFacial midlineこういうことはすべてIncisal edge locationを考えるときに役に立つのですが、次にGingival level。要は笑ったときに歯肉のラインは見えてはいけない。見えてはいけないのですが、それが揃った状況を作る。どういうことかと言いますと、骨の状況ができて初めて歯肉の状況はできます。ですから歯肉の状況を変えたければ、そのファンデーションである骨を触ってあげれば歯肉は変わります。骨があって歯肉があってその上には何があるかというと軟組織があります。その軟組織は頬粘膜であり口唇であるわけですね。その軟組織を支えているのが歯であり、歯肉であり歯槽骨であります。つまり顔面の表情というのは歯とその周囲組織で支えられていると言っても過言ではない。Gingival Levelが揃っているということは、そのFoundationが揃っているということ、つまり顔面の軟組織の状況が整うということになります。

じゃあ、歯肉の審美的な構成要素を考えると、歯頚線が対称であるとか、臨床的歯冠長の見え方はどうであるとか、歯肉のスキャロップ形態、歯肉の見え方であるとか、そういうことも非常に重要な審美的なファクターになります。簡単に言うと、総義歯の歯肉形成ですよね。

そういうことを踏まえて、実際の患者さんの状況を見ていきます。この患者さんは矯正治療の既往歴があります。有名な歯科の雑誌社に勤めていた方なのですけれども、とりあえず矯正治療はもう受けたくない、一番の主訴は2|の着色であり、もうひとつの特徴は、軽く笑ったときに下口唇が必ず歪むことです。この歪みが表情筋の問題から来ているかというとそうではない。笑ったときの下口唇のアーチを司り、コントロールするのは上顎の歯の配列です。1|1に翼状捻転があり、なおかつ2|が捻転していてやや舌側転位していますが、おそらく矯正後にリラップスしたのでしょう。そういう状況がずっと続いていたので、左側に比べるとリップサポートがうまくとらない。これは下顎の歯列の問題にもなってきます。ですからおそらく笑ったときに顔が歪んだようなイメージを受けます。我々のスマイルライン、つまり笑ったときの下口唇(上口唇は上に上がるだけであまり変化しない)は、上顎中切歯と犬歯のこの形に相応してくる。

これは最終的な処置が終わったところですが、ここまで持ってくるには何をするかということですね。その中で、今我々の使えるツールと言いますと、今までは削りました。削って形を変えたのですが、削らずに形を変えることもできるのですね。こちらに書いてありますのは、Bonded“A”Restoration、つまり何かをくっつけた修復治療です。ですから削るのか、Reductionするのか?それともAdd onするのか?何十年前から論争のあるのは、歯は削ってはいけない。そのとおりです。歯牙硬組織というのはいったん削ってしまうと、あるいは破壊されてしまうと、それを再生することは一切できません。再生医療の方でも、そういうことに取り組むので受けれども、まず無理です。不可能なのですね。それで例えば第二象牙質ができて、添加していくことを再生と捉えれば、ある意味でそうかもしれません。でも硬組織は削ってしまえば、それを元に戻すことはできません。だから削らないほうがいい。それはそのとおりです。そのような論争はずっとあったのですが、でも削らなければいけない場合だってあるのです。ですからReductionするのか、くっつけるのか、それを簡単に言えば仮の歯、Provisional restorative stageで作ってあげる。そしてそこで色々な試行錯誤して、できあがったものをうまく患者さんが受け入れてくれるのであれば、最終的な修復治療に持っていく。足したり引いたりしながらそういう計画を立てます。この患者さんの場合何を考えなければいけないか?治療の順序立てですね。初診時はこういう状態です。まずやらなくてはいけないのは変色歯です。変色歯ですから選択肢はやはりあるのです。この歯に対して歯の硬組織がしっかりと残存していてくれれば、旧充填物のコンポジットレジンをやり直して、漂白をしてあげておいて、ラミネートベニアを単に貼り付ければすむことです。ただこの方の場合、象牙質まで進んでいる二次カリエスがありましたので、それはなかなかできない。じゃあ削りましょう。プロビジョナルレストレーションを作りましょう。じゃあ、後の歯はどうするのでしょうか?計画を立てます。この中切歯をいきなり削ることはなかなかできません。それでは形態修正の範囲でできないだろうか?形態修正を行うにあたって、左右対称でない部分はどうしようかと考えます。そのときに1|にちょっと何かを足してやろうかと考えます。21|の唇側のクラウンカントュアは整いますが、それに対して|2はどうするか?削るのは簡単ですが、せっかく舌側転位してくれているわけですから(転位の度合いによりますが)、メインテナンスがきちんとできる範囲なら何かくっつければいいのではないかというようなことを考えます。まずやりましたのは、2|の根管治療を行った後、変性した象牙質を除去し、コンポジットレジンのダブルコアを装着して、Gingival levelを整えます。

ちょっと違うお話になるのですけれども、今ボンディングの世界では象牙質に対して樹脂含浸層ということが盛んに言われています。エナメル質に対するアプローチと象牙質に対するアプローチは全然違います。セメント質に対するアプローチは通常しません。ですので、我々が行うのは、エナメル質または象牙質にボンディング剤を塗布して、それをうまく接着させるということです。我々のやっている接着というのは、拡大してみると接着ではなく、アンカリング・イフェクトを利用した単なる篏合にすぎません。つまり微小なミクロ構造の中にレジンを流し込んで、それをタグとして、固定源としてくっついているように見せています。本来の接着というのは、界面が化学的に結合することですから。でも紙と紙が糊でくっつくこととボンディング剤の接着様式は同じです。紙の微小なミクロ構造の中に、糊の(ご飯粒の)構造が入り込んで、紙と紙をくっつける。我々のやっている接着はそういうものなのです。その接着の中で、エナメル質に対する接着と象牙質に対する接着は分けて考える必要があると提唱したのが、昭和大学の伊藤和雄先生です。今まではトータルエッチングと言いまして、エナメル質も象牙質もまとめて35%〜37%の燐酸でエッチングしてしまう、つまり脱灰してしまう。脱灰するとコラーゲンファイバーまで痛んでしまいます。コラーゲンファイバーが痛むと接着力が非常に低下してしまいます。このような基礎研究を伊藤和雄先生は行いました。故にエナメル質に対するエッチングと象牙質に対するエッチングは変える必要があるとし、エナメル質に対しては、通常の燐酸でのエッチングをしますが、象牙質に対してはいわゆるコンディショニング、つまりスメアレイヤーを除去して表面性状をきれいにする。そしてわずかに脱灰させる、でもコラーゲンファイバーは破壊しない、そういう状態をつくるためにEDTA(PH7.4)でデンティン表面を処理するわけです。次にプライミングという処理をします。これは35%グリセルモノメタクリエート(GM)水溶液というものを塗るのですが、要は溶媒のようなもので、象牙細管をシールドしてしまいます。生きている歯の象牙細管は必ず水分が遡上してきます。そして水分がある限り接着というメカニズムは働きません。本来の接着は何千倍もの強拡大で見たとき、わずかな水分がなければ接着できないのですが、我々の行う接着では水分は邪魔になります。ですからこの35%グリセルモノメタクリエート(GM)水溶液で水分をブロックして、その上にボンディング剤を塗布することにより、伊藤先生は、象牙質のエナメライゼーション(造語ですが)、エナメル質化してその上にコンポジットレジンを盛ることを提唱されています。なぜそんな面倒なことを行う理由は、コントラクションギャップ(界面の隙間)がある重合システムを採用すると必ず問題を起こすからです。生活歯の傷みがでます。それをなくすためのシステムを伊藤先生が開発したのです。このシステムを3~4年前に聞きまして、最初は疑っていたのですが、実際に臨床の場で使うようになって、離せなくなりました。少し難しいようなコンポジットレジン充填を実体顕微鏡で20倍に拡大して、ボンディングされた界面を見ると、以前のものとぜんぜん違います。20倍程度ではギャップがないことがはっきりと分かるのです。それともうひとつ大きい長所は、痛み、つまり臨床的な不快症状がほとんどないことです。今私の臨床ではこのシステムなしにはコンポジットレジン充填は考えられません。特に象牙質に対しては。もちろん我々のスタディクラブでも、これを配布しまして使ってもらっています。マニアックな先生方にとってはどんなシステムでもかまいませんが、1日80人も診る人は、日常臨床で、本当にコンポジットレジン充填に時間をかけることはできません。でもそういう忙しい人こそがこのシステムをお使いになると、よりよい結果を残せます。

「だから先生、これは離せません。」そのような声をたくさん聞いていますので、これは本物であると感じています。まあ簡単に言うと、スメアレイヤーを象牙質から除去して、スメアプラグを除きます。次にプライミングすることによって、この象牙細管から上がってくる水をカットします。水の上昇を遮断します。そして今度はボンディング剤の浸透・拡散を抑制して、つまりくっつきを良くすることですね。そしてその上に、もっと丁寧にやろうとするならば、フロアブルな、今でしたらもっと流動性のいいコンポジットレジンがありますので、それを敷いてやって、その上に少し固めのものを敷いてやる。するとまずギャップができるということはありません。レジン充填で一番痛みが出るのは、象牙細管に対する刺激がひとつ、それとギャップです。ギャップがあるとその部分が物理的な空隙になりますので、ある人は空隙に生ずる気圧差が痛みを生むと言います。でも要は水が上がってきて、空隙に溜まって刺激になるということです。グリセルモノメタクリレートによるプライミングは水分上昇を抑制して、接着界面の重合阻害を阻止します。

伊藤先生の本が医歯薬から出ていますので、読んでもらうとよくわかると思います。

このようなシステムを臨床に取り入れてから2年になりますけれども、変わったことは、メタルのダウエルコアの必要性がなくなりました。それだけコンポジットレジンのダウエルコアによって、問題なく上部構造をそこに装着できるということですね。

このケースの場合、まずは何をするかと言うと、こうやって診断用ワックスアップを起こします。この患者さんの口腔内をどう処理していけば、前歯のアーチ、歯列弓を保全することができるか、歯列の連続性を保てるか?この切縁と唇面の連続性が保たれると、その上に乗る口唇の形をうまくすると変えることができる、もしくは変形を防ぐことができます。ワックスアップ後に透明レジンでフォーミングシェルを作ります。これを我々はクラウンシェルとかクラウン・フォームングシェルと呼んでいます。コンポジットレジンを盛った上からフォーミングシェルを圧接すれば、簡単にその形状を変えることができます。ですからチェアタイムを非常に短くすることができます。我々は最終的に何を患者さんに提供するかと言うと、チェアタイムを提供するのです。自分のチェアタイムに対して、患者さんにどれだけの診療費を払っていただくか、それはもうチェアタイムの大小にかかってくるわけです。もちろん技術料という方もいらっしゃいますし、材料だと言う方もいます。でも極論を言いますと我々はチェアタイムを売っているわけです。そして買ってもらっているわけです。あまり言い方は良くないですが。ですからこういうことを考えれば非常にコンポジットレジン充填が楽になります。チェアタイムが圧倒的に少なくなります。これを自分で盛っている場合は大変です。

左側にはファイナルレストレーションが仮着されていますけれども、これをフォームングシェルでビルドアップすると右側の状態になります。もちろん1|の遠心は翼状捻転していますから歯列を整えるために、少しエナメル質の範囲で削り、形態修正しています。

マテリアル・セレクションですけれども、材料の進歩ということでお話させていただくと、おそらくメタルはどんどんなくなってくと思われます。またメタルは貴重なものですから、なくさなくてはならないと思われます。ゴールドだとか白金だとかパラジウムもそうかもしれません。一番怖いのはアレルギーです。イオン化傾向の高い金属は必ずアレルギー性疾患を起こします。もちろんタンパク質もアレルゲンとなりますが。それよりもメタルフリーの一番臨床的な効果として大きいのは、オールセラミックスクラウンを使うことにより得られる審美的効果です。アメリカなどでは歯科技工士という制度がありません。だから誰でも手を揚げて、私は歯科技工士であると宣言すれば、その日から技工士になれます。つくることができさえすれば。でもその人たちが一番困るのが、porcelainfused-to-metal crownいわゆるセラモメタルクラウンです。これにはテクニックが必要です。メタルの厚みの上に、陶材をビルドアップしていって天然歯のような色調を出すことが一番むつかしいのです。でも誰がやっても成功しやすいのが、オールセラミッククラウンです。ですから今かなりの割合で、オールセラミッククラウンにシフトしてきています。ブリッジも、オールセラミックス化してきています。それはベースをジルコニアにする方法です。まだ日本では認可されていませんけれども。で、ファイナル・リザルトがこういう状況になります。2|がオールセラミッククラウンです。これはプロセラというシステムを用います。1|遠心部はコンポジットレジンを足しただけ。1|遠心唇面はエナメル質の範囲で削っただけ。|2はレジンシェルでコンポジットレジンを足しただけなのですね。ですから何も削っていません。もちろんコンポジットレジンですから必ず変色します。だから所詮コンポジットレジンですけれども、されどコンポジットレジンなのですね。変色してポリッシュする、研磨することによって、その色をもう一度ある程度まで元へ戻すことができます。でもそれが経年的に3~4年たったらどうかというとそれはクエスチョンです。私のコンポジットレジン充填の一番長いケースで13年というのがあるのですが、(一番長いのは18年だが、継続的な来院ケースでは)やはり変色してきます。それをポリッシュするのですが、もうベースの色が変わってきますよね。でも二次カリエスがあるかというと無いです。それはもちろん昔のボンディングシステムを使っていますが、一応問題なく経過はしています。ただやはりレジンというのは吸水します。吸水する限りは必ず変色というのは避けられません。でも簡単にいくのです。なぜこんなショートカットなことをするのかというと、この子は仙台から飛行機で飛んでくるのですね。一回来院すると次に3日後に来てよとか、一週間後に来てよとか言えません。一回来たときにやれることをやっておいて、山形県に帰ってもらって、山形県からまた一ヵ月後に来院して仕事をして帰っていく。そういうようなシステムですから、コンポジットレジン充填の部分の色が変わったら、今度はそれを剥がして、そこをラミネートに変えましょう。そういう話をしています。

左図は、左側がメタルダウエルコア、右側がコンポジットレジンダウエルコアで、光の透過像がこれだけ違います。上側は圧排コードを歯肉溝に挿入したところですが、黒い色を歯肉が透過します。これをGray ahadowと呼びます。これを嫌がる人がいます。ですから光透過性の良い素材を使えればベストな選択です。デンティンボンディングシステムのお陰で、現在こういう素材を使えるようになりました。これはプロビジョナルレストレーションで1|にはレジンを盛っていないのですが、プロビジョナルレストレーション装着して笑っていただいたときに、ちょっと変化します。もちろん口唇の形はまだ変わっていませんよ。患者さんが山形に帰って、母親に「最近、あんた笑うと顔が歪まなくなったね」と言われました。ああなるほど。唇面のレベルをある程度整えるだけでそれは変わってくることがわかります。まだ完全ではないですよ。右図は2年後のリコール時の写真です。|2のようなコンポジットレジンベニアレストレーション、これが盛んに行われるところがあります。それはミス○○コンテストのときに、一週間から10日くらいで歯列を皆変えないとだめだと。叢生があるから。そんなとき、唇面にコンポジットレジンを貼り付けます。それに特化した歯科医がアメリカにはあります。一番有名なのはハワイと言っていましたね。右図がファイナル・リザルトです。次は初診時とファイナル・リザルトです。2|だけが削って補綴していますが、後は足しているだけです。初診時に比べると、元々美しい方ですが、かなり口唇が改善されています。

さて本題のラミネートベニアです。くっつけるだけですめばいいのですが、19〜20歳くらいのこの患者さんの場合、バイクの事故で転んで、歯を破折してしまった。色々な選択肢があります。コンポジットレジン。それでもかまいません。ただ1|の遠心隅角部をコンポジットレジンで修復して、|1と変わらない状況を作ろうと思うと、おそらく6時間くらいかかるでしょう。ベースを作っておいて、カットバックを入れて、さらにその上に透明レジンを入れて、さらに色調を見て、その色調がだめならもう一回やり変えですから、それにステインが使えません。ですから実はあるコンポジットレジンだけで色調を変えていくというのは至難の業なのですね。隣に歯が在って、それに合わせて修復するというのが一番むつかしいです。

患者さんと相談して、まず考えましたのがアディショナル・ラミネートベニアです。なにしろこの症例はエナメル質だけでなく象牙質まで破壊されていますので、それに同様に接着するものを作ってみようとしました。つまりスモール・ピース・オブ・ポーセレンですね。もちろんエナメル・ボンディングとデンティン・ボンディングが必要になります。でもこの結果は分かっています。左図はこの方法で修復した結果ですが、どうしても境界がはっきりと判ります。患者さんに言うと、先生ありがとうございますと云うのですが、結果に納得できないわけですね。この状態でジャンクションがどうしてもとれません。そして経年的にジャンクションから必ず変色が起こります。じゃあエナメル質を一層だけ落として、上にベニアを貼り付けましょう。幸いなことに|1のほうが1|よりわずかに唇側に出ているのですね。ですから1|唇面の一層のエナメル質を除去するだけで、すむのですね。我々モンゴロイド系の場合、欧米人と違いまして、歯頚部のエナメル質の厚みが違います。ですから0.5mm削ってしまうとまずなくなるということが多いですね。ですからこの部分の形成量は0.3mmくらいがベストなのです。では0.3mmでテクニシャンに仕事しろと言って、できる人はあまりいません。どうしても0.5mmくらいのリダクションが必要になるのですね。でも幸いなことに、これは唇側に転位していますから、表層を一層削るだけですむわけです。もちろんこのポーセレンの接着した部分も一緒に形成します。シェードテイキングをします。2|は失活していますが、破折線があっても割れていないのでこの状態でいいだろうと判断しました。色が変わってきたら、漂白しようねという話しをしています。もちろんコンポジットレジンできっちりと詰めていますけれども。初診時の状態から隅角部にスモール・ピース・オブ・ポーセレンを貼り付けて、最終的にベニアをこの上にくっつけます。まあ、こういう状態でしたら、患者さんは非常に大喜びです。

左下Eが永久歯の先天的欠損のために残っていまして、動揺しています。問題が起きたら抜歯する説明を行い、患者さんに「君はまだ学生だからお金を貯めて来い」「お金貯めてきたら、ここにインプラント1本プレースメントして、そこに上部構造体つくろうね」という話しをしてあります」我々のできる治療法の中で、このラミネートベニアという方法は、歯に対して侵襲が一番少なくて、そしてエナメル質だけのボンディングで済んで、そして尚且つカリエスに対する抵抗性が一番強いのですね。そしてもっとありがたいのは作るのが難しいのですけれども、色を合わせるのがそんなにむつかしくない。ベースの色をそのまま利用することができる。天然歯を削って、修復材料を入れて、天然歯よりきれいにするということは、私の臨床でもそんなことあったかなと思うのですけれども、天然歯を削ってベニアを貼り付けて前よりもきれいに見えるということをよく経験します。ですから審美的なツールとしては非常にいいですよね。

では今度は同じような学生のケースを見てみましょう。カリエスのない正中離開の症例です。

「ぼくはちょっと映画の通行人をやるので、前歯が気になる。」

と言うので、

「通行人ならしゃべりもしないし、通るだけだから判らないだろう。」と言うのですが、「気になる。」と言うのですね。まあ確かに気になると思います。じゃあどうするか。近心にコンポジットを足してやるプランは、あまりに歯の形が変わります。削って、または近心にアディショナルのベニアを足すか?それもやはり論外です。簡単に考えますと、この空隙を詰めてしまえ。ブラックスペース プロブレムが、昨今まで話題に上りました。

「私の歯と歯の間に隙間がある。この黒い隙間を埋めてくれ。」

埋めるには、色々な方法があります。その埋める材料は歯間乳頭であるべきなのですよね。でもそれで埋まらない場合は補綴的に材料で埋めてやる必要があります。日本で一番有名なテクニシャンであるMr.桑田とシルダースタインのゴールデンコンビがいますが、1960年代、色々な学会に行くと必ず桑田先生に誰か有名人が挨拶に来ます。それほどこの方は日本で有名な方ですよね。Mr.桑田とシルダースタインのコンビはProximal long contactというコンセプトを提唱しています。何かと言うと、要は長いコンタクトを作る。つまり簡単に言うと、ブラックスペースをうまく修復治療で埋めることができるということです。あと類似のテクニックとして昨今ではTissue supporting crown contour、ハーフポンティック・テクニックなど様々なことが言われています。

まずベーシックデータを採取してからこの症例の問題点を拾い上げます。それはそんなに難しいことではないですよね。正中だけですから。

順序立てた治療計画の立案をします。

必ず考えなければならないのは、最初に歯と歯肉と歯槽骨の三者の関係です。それから治療部位、治療期間、治療順序、修復治療の設計、後は様々です。そのようなことを考えて、第一選択枝はとりあえず矯正で詰めてしまえ。では、フルブラケットで矯正するのかというと、そうじゃないですね。この犬歯から犬歯の間を詰めてしまって、そしてスペースをどこかに作ろう。もちろん歯冠径とアーチ(歯槽基底弓)の長さを計測して、arch length discrepancyを診ます。診た状況により、なにも一番むつかしい正中でスペースを修復的に詰めるのではなくて、スペースを一箇所に集めていってそこで詰めればいいじゃないかと立案します。全顎敵な矯正治療をしていませんから、必ずスペースはどこかに出来ますね。ここで説明しているのは、このような正中離開で青年期を終わろうとしているときに、この人が口唇を閉じてものを飲み込もうとすると、口腔内を陰圧にしなければ、絶対ものを飲み込むことはできません。陰圧にしようと思った場合、隙間があればできないのですね。この隙間を埋めるために舌を隙間に突っ込みます。口唇の隙間に当たる部分も変形し、リップ・サポートも変化します。必ず我々の生体は、歯列に欠損があると、軟組織がその欠損を埋めなければ、食事をすることができないし、喋ることができません。ですから我々のやっていることは、単に歯を並べて、隙間を埋めるということではありません。顔面の状況をすべて変えてやることができます。つまり、軟組織の変化を止めてやる必要があります。でもこの人の場合、舌を隙間に突っ込む習癖、tongue thrustが100%起きています。そうしなければものが食べられませんし、生活できないわけですから。tongue thrustの有無をよく観察してその習癖を除去しなければなりません。除去しないと必ず後戻りします。実はこの人は後戻りしたのです。矯正治療が終わりました。スペースクロージングしました。もちろんbodilyには動かしません。傾斜移動、つまりtippingさせているだけです。ですから歯根の状況はあまり初診と変わっておらず、単に歯冠部がくっついているだけです。でも32|23の間にスペースを持ってきました。

上條雍彦(やすひこ)先生や藤田恒太郎先生の成書にかかれている、通常の日本人の天然歯の幅に比較したとき、この犬歯の幅は小さいく、尚且つ両側切歯のサイズも小さいのです。ではこの隙間をどう詰めるか?コンポジットレジンを使ってもかまいません。やり直すのが面倒なら、ラミネートしてもいいでしょう。この場合、Additional Laminate Veneer Restoration を選びました。単にスモールピースのポーセレンを接着させるだけで、歯は削りません。

ですから、Easy bonding、エナメル質ですからね。それから

Not difficult to make、作るのはそんなに難しくありません。一番いいのはreductionしなくていいことです。歯を削るストレスがないのです。これはMock up trialと称しまして、要は側重レジンで仮のピースを作りまして、テストするわけです。この人の場合、犬歯の唇側のカントュアを膨らませるため、犬歯をすっかりカバーし、そして側切歯は遠心のスペースだけ埋めて2の形を作る、トライアルをしながら形態修正を行い、患者さんに見てもらいます。

「先生、もうちょっと気に入らないからここをもう少し削って‥」

「判ったよ。どう、これくらいで」

「うーん。これくらいだったらいいかな」

「じゃあ、これでいこうよ」

右図(左上、左側)は犬歯です。本当に付け爪みたいなものです。削らずに単にはりつけるだけ。その右は側切歯の遠心にくっつけるためのものです。

それをくっつけました。まず正面から見て、判る人はいないと思います。ただ側方から見るとどうしても界面が見えますが、なんとなく流れからいくと判りづらい感じがします。この犬歯は付け爪のような状況で完成です。

で、こういう状態ですね。うまく通行人ができたかどうか聞いていませんけれども。もちろん先ほど言いましたように、舌癖がありましたので、それは練習しなさいと言い、まだ保定装置を入れてあります。こういうようなおもしろい使い方ができるということですよね。

次はこのような患者さんです。21|2が失活歯です。|1は天然歯です。2|12にはラミネートベニア、1|にはセラモメタルクラウンが入っています。この状態で気に入らないから作り直してちょうだいといらっしゃいました。

「別にいいじゃない、これで」

と言うと、

「いや、色が‥」

男の子のくせに犬歯を漂白していて、漂白が好きみたいで、どうしても審美的に嫌だと言うのですね。文句言う割には、切縁を見て判るように、結構歯ぎしりしているのですね。ブラクサーとまでは言いませんが、咬合の問題を抱えたむつかしい症例です。じゃあ、まず外してしまいましょうと言いました。外すには外す理由があったのです。皆、中が二次カリエスでした。二次カリエスがなければ、このようなむつかしい症例は

「やめようよ」

と説得するのですが。ただ|1だけはラミネートベニアが貼り付けられているので、全周にエナメル質が残っています。残っていれば、それをひき剥がす必要はありませんよね。この場合、360度のベニア形成をするのですね。非常に面倒なのですが、少なくともすべてエナメル質を残しておいてあげれば、360度のラミネートベニアを装着してあげればすむことですね。非常に価値があります。一番これをやってありがたいのは、外してセメントを除去しても、まったく沁みないということですよね。エナメル質が全周に残るわけですから、歯髄刺激がなにもありません。もちろん欠損部にはコンポジットレジンを充填しなければなりません。それでもストレスはありません。21|2はしょうがないですから、二次カリエスを取りきって、再根管治療をすると、もうコンポジットレジンのダウエルコア、もしくはコンポジットレジンコアが必要になります。

コンポジットレジンダウエルコアの話をちょっとだけします。

私の臨床ではメタルダウエルコアはほとんどなくなっています。なぜなくすかというと、一番怖いのは歯根破折です。よく成書には、失活歯に対してダウエルコアを装着する目的として、残存歯質を保存すると書いてあるものがあるのですけれども、それは真っ赤な嘘です。あくまで歯冠部の歯質がないものに対して、修復治療を行う必要から、単に上部構造体をそこにつけるために便宜的に存在するものであって、けっして残存歯質や歯根部を守るものではありません。破壊する方向には働きますが。ですから硬いものはあまり良くないわけですね。どうせ硬いものなら、思い切り硬いジルコニアがいいと言った人がいるのですが、今クエスチョンです。じつは私もこういうコンポジットレジンダウエルコアをやる前には、どうしても前歯の審美的な条件を満たすために、ジルコニアコアを取り寄せて装着しました。装着して誰かに言われたことがあります。

「先生、根管治療に自身があるのですね」

「あるよ」

もし問題が起こったときに、再治療ができない。根尖三分の一位まで、通常通り形成したジルコニアポストを外すということは至難の業です。メタルの百倍くらいの時間がかかります。再治療のできない治療というのは良くないですね。100%の治療のできる人間なんて絶対にありえないと私は思っています。

コンポジットレジンダウエルコアの場合、面倒なことはありますよ。でも、外すことに関してはそんなにストレスはない。それと一番ありがたいのは割れるときは、コンポジットレジンダウエルコアだけが割れてくれるのですね。歯質を巻き添えにして割れることはあまりありません。ダウエルコアに関しては、かなり色々な方がリサーチをしています。結論を言えば、リサーチを見ても、咬合力の分布を見ても、コアは修復物を維持する機能だけしかなく、一切歯質を保存する方向に力は働きません。だから残存歯質の保存機能はないのですね。では、できるだけ残存歯質を保存させるための研究をしたのが、Libmanリブマン教授ですね。それともうひとつ追試をしたのがSorensenソレンセンですね。これは、もうナショナルコンセンサスを得ています。どういうことをするかというと、要はフィニッシュラインの部分の健全歯質の高さを保ちましょうということです。それをFerruleと言います。日本語では口金とでも言うのですかね。桶についている箍(タガ)のような効果があります。だから歯頚部から水平にスパっと切ったものよりも残存歯質をFerrule状に残したものの方が、破壊応力が少なくなるよということを実験的に実証しました。ただその実験が口腔内で行われたかというとそうでもないのですがね。けれども実験をやらないよりはましです。非常にFerrule effectは重要なコンセプトです。

まあ、こういう風な様々なリサーチがなされています。でも、そこまでメタルに拘る必要はないのではないかと思われます。USC、南カルフォルニア大学の十数年前のリサーチで、失活歯3000症例の追跡調査をしました。その結果恐ろしいほど歯牙の破折、歯根破折が起きています。歯根破折は抜歯する以外に手がありません。時々、成書にレジンで詰めて元へ戻している症例が出ていますが、そんなことありえません。本当に咬合力を支えるKey toothになる歯にそんなことをしてもとてももちません。骨がなくなるだけです。ですから歯根破折をした歯は即抜歯をしないと骨があっという間になくなります。3000症例をフォローアップした内の30%に歯根破折が認められました。それがアメリカのリサーチですが、モンゴロイド系の我々というのは、コーカソイドと違いまして、歯髄の形からして全然違います。だからコーカソイドでは、麻酔なしで削ることができ、通常モンゴロイド系で削ったら露髄している量を削っても、歯髄が露出しません。つまり抜髄が少ないのですね。アメリカに行って、エンドドンティストのところへいって見学していて、何でこれを抜髄するのか疑問に思うことがありますが、その理由は単にひとつだけ、患者さんが染みるから痛いと言うからです。日本だったら、我慢しろと言うのです。でも、向こうは

「沁みて痛い」

と言えば

「分かっている」

と言って抜髄します。それ以外には抜髄の理由はそれほどないですね。ですから向こうの方が、失活歯というのは少なかったですよ。それに比べて、日本は失活歯が圧倒的に多いですよね。ですから、我々が再治療できる条件で、歯質をできるだけ残す治療のダウエルコアを作らなければならないということです。じゃあ、そのダウエルコアというのはダウエルとコアですから、マテリアルがメタルであるならば、メタルダウエルコアです。コンポジットレジンであれば、コンポジットレジンダウエルコア。ですから私の選択肢としては、現在、コンポジットレジンダウエルコアを使っています。それが使える理由のひとつとしてデンティン・ボンディングシステムがあるからです。ダウエルコアの必要条件で一番大事なことというのは、歯質を残しましょうということです。360度歯質が残っていたらこんなものする必要はないですよね。もしくはペリオ的に言うと、3壁性のような資質の残存状況であれば、それもこんなものする必要がないですよね。でも歯冠部歯質がほとんどないのであれば、これをする必要がある。ではその時に、ダウエルは骨内の歯根長の二分の一以上なければ、物理的に上部構造体を保持できません。それとダウエル部の太さはできるだけ細くしなければ駄目ですね。ですから昔はやった目で見る根管治療といって、バカバカ拡大するのは、これは論外です。尚且つダウエルコアをつくるために根管を形成しすぎるのも、これは論外です。ですからそのうち、根充材がもっと良くなって、根充材がそのままボンディングシステムでボンディングできるようなものになってくれれば、ダウエルコアなんて必要なくなる時代がくるかもしれません。

本家の伊藤先生言わせると、下顎重合するものであって、尚且つ、直接法でダウエルコアを完成させないとデンティン・ボンディングシステムは完成しないと言うのですが、チェアタイムを淡色するために、このダイレクトメッソッドというのはほとんどやりません。インダイレクトメッソドをやります。つまり模型上でつくって、それを通法どおりの処理をして、セメンターションを接着性レジンセメントで行うというものです。

ですからこういう風に、通常通りのコアの印象をして、模型上でコンポジットレジンとグラスファイバーのポストを根管に入れます。その上にビルドアップしてそれを接着性レジンセメントでセメンターションします。

2|の歯冠の大部分はエナメル質が残っていますが、近心にだけ旧充填物とカリエスがあったので、充填します。

充填しなおしてやると、水をかけようがエアをかけようが染みません。削るのは大変ですが、360度エナメル質を残すということがこれほど楽なことかと思います。一番ストレスがあるのは、このように象牙質まで削ることです。

こういう状態です。プロビジョナルレストレーションを装着するとこうなります。後でまたお話しますが、|1は先にセメンテーションをしなければいけない理由がありますので、この部分だけ、先に360度のラミネートベニアクラウン、簡単に言えば昔言うところのポーセレンジャケットクラウンをつくってセメンテーションして色が落ち着くのを待ちます。待ってからその横の色を決めて、ファイナルに臨みます。もちろんプロビジョナルレストレーションで、しっかりと再評価をしてあげて、最終的なrestorative phaseは、じゃあマテリアルをなんでやるのか?もう簡単ですよね。オールセラミックスクラウンですよね。|1が落ちつくのを待って21|2を作るのですが、その際に問題になるのはやはり透過度です。黒いものをバックにして写真を撮影すると、どうしても1|と|1の透過度が変わってきます。この状態です。

じゃあ、最初にラミネートベニアの基本的なお話だけさせていただきます。ラミネートベニアプリパレーションですが、リダクションが、つまりエナメル質内の形成でなければラミネートベニアの意味がまったくありません。エナメル質に対しボンディングできるから価値がありますね。ですから一番注意しなければならないのは歯頚部の形成です。歯頚部は0.7mmではエナメル質がなくなってしまいます。じゃあ0.5mmはというとクエンチョン。ですから最初に必ずオリエンテーショングルーブというのを入れるのですね。そして唇面や軸面のオリエンテーショングルーブは、軸面が0.3mm。最初に出たバーの厚みは0.5mmです。ですからいくら削っても0.5mm以上削れません。けれども0.5mmのデプスを入れてしまうと、それをフラットにして仕上げをすると、0.7mm削れてしまいます。ですから最初のリダクションは、あの0.5mmのバーで0.3mmくらい削り、そして歯頚部中央と切縁にリダクショングルーブを入れておいて、そしてインサイザルの部分は最高でも1.5mmまでの切削に留めます。中には2mm削れる患者さんもいらっしゃいますが、この歯はもともと咬耗していますから、削れる量は1mmまでです。1~1.5mmまでの間と考えてください。そこまではエナメル質をリダクションしてもかまいません。また、しなければいけないのですね。昔、私も時々やりますが、咬合の問題で、非常にファセットの強い人、その歯に対して、ラミネートベニアを行うときに、舌側の歯質をどれだけ残すか、つまり唇側をどれだけ削るのか、言い換えれば、切縁を削るのか、削らないのか、その考え方は二通りあります。あまりシビアな場合は切縁を落とさないです。けれどもそうでない場合、通常のオクルージョンを営んでいる方で、歯ぎしりなの既往歴のない人だったら、こうやって切縁を落とします。それの方が理に適っています。それはまた後でお話します。リダクショングルーブを入れておいてそれを均していきます。ですから0.3mm入れるということは、どう均してもきれいな面をつくろうとしたら、0.4mm、それを越えることだってあります。歯頚部にはできるだけ注意を払う。それからもちろん隣在歯は削ってはいけませんから、最初の頃は必ず隣接面にストリップスを入れてください。隣在歯にバーが当たると、そこは必ずエナメル質が削れていますから、ポリッシュしない限り100%カリエスになりますからね。通常のラミネートベニアの場合は、歯肉縁上か歯肉縁ぎりぎりで形成します。この方の場合は失活歯ですので、最初は漂白でごまかしていました。2~3回はそれでごまかされるのですけれども、4〜5年経過して、また変色してくると、

「先生いいかげんにしてよ」

と言われるので、

「じゃあ、しょ